2000/6/7 10 クルージングヨット
さてさて、私の考えるクルージングヨットとはどんなものかと言うお話をします。1でお話したどんなヨットが良いヨットか?と言うのをまとめると。素直で直進性に優れ(長時間手放し帆走が出来)、船体が硬くて軽くスピードが早く波をデッキにすくわない、乗り組み員の体力知力を温存出来るヨットが性能の良いヨットだと言う事になります。単独または少人数のクルージングを考えているので、艤装もそれなりにシンプルで1人で扱える範囲のセール面積の船が良いと思います。
それ意外に、日々の生活が有ります。荒天時も、好天時も室内でもデッキでも過ごし易いと言う事も大事な事です。湿度100%になり易い海の上で、快適に過ごすのは容易な事では有りません。荒れたらきちんと締まるオープンポートや、ベンチレーションシステムによって、快適さに大きな開きが出て来ます。衣食住の衣は誰も見る人も無いし、長そでで紫外線に当らない工夫や、つばの広い帽子を冠るくらいの事で良いと思いますが、食住に関しては陸に住んでいる以上に気を使います。
食事はクルージングの大きな楽しみの一つなので、あれもこれもと日頃全く食べないものも欲しくなる事が有るので、色んなものを積んでおくと良いでしょう。私は量で満足する様な所が有るので航海中はたいてい太りましたが、変わったメニューで質で満足出来る様に、料理の本や材料等も多種類に渡って考えた方が良いでしょう。兎に角変わったものが食べたくなります。ただし野菜類で長持ちするのはタマネギとじゃがいもくらいの物です。日本一周くらいの航海だと、入港事に次の港までの食料を買い込んだ方が良いかと思います。非常食は荒天時に料理が出来なかった時の事を考えて1週間分くらいは必要でしょうね。
ヨット作りの段階から関係して来る住の事ですが、設計者は平均的なヨットでの生活を考えての設計しかしていないので、不便と感じたらすぐに変更するくらいの心構えが必要です。思い込みで無く、使ってみての変更が一番良いと思います。特に安全面では市販のヨットは最低限の考慮しか出来ていないと言う事を頭に入れておいて下さい。ジャックラインは最初から固定していた方が良いでしょうし、ドッグハウスからコクピットへのアプローチにはハンドレールは是非とも必要です。長距離航海と言えども走っている時よりも、停泊している方が長いのが普通ですから、キャノピーやビミニトップでデッキに日陰を確保する事は大切な事です。叉ずっとキャビン内に寝るとは限らないので、コクピットに寝る事も考えておかねばなりません。荒れて来たら取り外せるキャンバスをコクピットを覆う様にライフライン沿いに張れる様にしておく事も必要だと思います。陸での住環境意外に、ヨットではテンダーを使った上陸も有るので、その上げ下ろしや収納等も考える必要が有ります。生活のあらゆる面に渡って考えて、やってみて、ダメなら何度でも直して、より良い住環境を作り出す。これは結構面白い事です。
以上ですが、その人その人生活スタイルが違うでしょうから、クルージング性能の良いヨットを手に入れる事。そしてやってみて創意工夫で変えて行く事。クルージングで快適に過ごす事に力を注ぐ事を楽しみにできる事。それくらいが大切な事でしょうか。人のヨットを見せてもらって良い所は真似る事も大切ですが、日々の生活の中に、創造力を働かせる部分はいくらでも有り、それが楽しいと言う人で無いと、クルージングはつまらないものになるでしょう。物量的に言うと、陸の方が圧倒的に快適な事は最初から解っています。しかし、将来の夢のクルージングを頭においたヨットライフで、陸の生活では味わえない非日常の楽しみを毎週のデイセーリングからでも味わえると思います。