105 ウエスト工法の図面 (2005/08/06) 

Tさんの疑問
ちょっと疑問がありますが、横山さんの設計図はWEST工法の設計図ではないのですか?
僕はずっとそう思っていました。

私の答え
そうなんです。
WEST工法の設計図がないので横山さんの設計図で必要以上に強い船を造っているわけです。

強いというのは
横山さんは木ビスやボルトナットを強度材として残すような図面を書きますが、
僕の船はそれを全く排除してエポキシフィレットを付けるので、
ハードスポットが無くなり格段に強くなります。

そして長持ちします。
(金属と木が接すると
温度差から木質内にあった水分がみんな金属部分に引き寄せられてはその周りに集まり、
栄養豊富な木と水でバクテリアが繁殖してその部分から木が腐ります
そんなボルト部分から腐って強度を無くした船を沢山見ました)

ウエスト工法はエポキシ大工にしかできない芸当です。

ウエスト工法はいわゆるピンポン球が一番軽くて強いと言うのを地でいくような工法です。

従来の太かろう重かろう強かろうの考え方を転換しないといけない工法なのです。

その代わり今までの木造船のようにキロいくらというようなかけ目では計算できないようなエポキシを使う腕を持っていないと出来ないやり方です。

今までの木造船と全く違う考えに立って作るのですが、
木造船を買う人たちはいかにも木造船という感じのニス塗りを喜びます。

ウエスト工法でどのくらい労力とエポキシを使いどのくらい強い船が出来るかと言うことは二の次のようです。

余りに苦しいので手を抜こうかと思うこともあるにはありますが、
この船を見る人は池川が造った船という目でいつまでも見ます。

その時の条件などは見えません。
だから誰のためでもない私のために一生懸命作るしかありません。


Tさんの疑問
だとすると、池川さんは必要以上の事をやっているのですか?

私の答え
昔ながらの木造船作りのように横山さんの図面通りにするのが必要なことなら、
それ以上のことをしています。

図面は全く昔ながらの木造船でそれに低粘度エポキシを染みこませるのをウエスト工法と思っている人がほとんどです。
低粘度エポキシは木には染みこみません。
低粘度エポキシもペンキと一緒で表面に膜が出来るだけで染みこまないのです。

日本にはウエスト工法のヨット設計図面はありません。

エポキシフィレットで接着面に破壊できないほどの強度を持たせるのがウエスト工法の真髄です。


私が 造った船は船体が歪みません。

本当にピンポン球です。

普通FRPや今までの木造船では片方から風を受けて傾いて走る(ヒール)時は
風下側のマストを支えるワイヤーがだらだらに緩みます。
船体が歪んでいるからです。
(レース艇などリギンを出来るだけタイトに締めて走りますがそれでも風下側リギンは必ずだらだらに緩んでいます)

それに船首でドカーンと波に激突するような衝撃は、
コクピットに少し遅れてゆさゆさと伝わってきます。

歪まないウエスト工法の船は全く風下 リギン(マストを支えるワイヤー)も緩まないし、
船体の波の衝撃も同時に伝わります。

そんな本物のウエスト工法の船を造ったことがあるのは日本では私だけでしょう。

乗り手としてそれを知っているのもほんの10人以下です。

私は太平洋横断中に(25歳の時)
最高の船を手に入れるには自分で木造ヨットを造るしかないと思い立ちました。
(私が太平洋を一周したのは出来の良いFRPの船です)

そして30艇以上の木造ディンギーを造る内に、
ウエスト工法という聞き慣れない言葉に行き当たりました。

エポキシをぺたぺたと出来上がった木造船に塗っている内にこんなはずはないと、
ウエスト工法の本を海外から取り寄せました。

そして本物のウエスト工法に試行錯誤で着手したのが最初に造ったクルーザー「萬丸」です。

あのとき300万円の赤字を出しましたが、
ウエスト工法の本当のところを知り大満足でした。

そして自信は出来たが仕事がないので私自身の船「花丸」

そして今の7.8メートルです。



私が横山さんの図面の船を作るのはサバニ船型の良さを知っているからです。
手放し帆走が出来る直進性の良い船は外洋航海に向いています。
オートパイロットにもウインドベーンにももちろん乗り手にも負荷を与えず航海できます。

ウエスト工法の図面で直進性の良い船があれば横山さんの図面にはこだわりません。

本物のウエスト工法の船は一体構造でフレームも全部外板に含める、
デッキビームもデッキに含める ような感じです。

丁度木を骨材に使い接着剤としてエポキシを使ったFRPの船の様な物だと考えてください。

フレームは高さ200ミリはあろうかと思う合板で強度が必要な部分だけに入っています。

その合板に大きなエポキシフィレットが付いています。

ウエスト工法は軽くて早いレーサーを生み出すために作り出された工法でしょうが、
外洋航海をするヨットにも軽くて早いと言うことは非常にメリットになることなのです。

のんびりゆっくりヨットの旅をするというのは気持ちの上だけでよいのです。
その旅に使う船は 安全に楽に航海をするために軽くて丈夫で無ければならないと思うのです。

もちろん横山さんのサバニ船型の直進性は圧倒的な余力を乗り手に与えてくれます。



日本にはウエスト工法の図面は存在しないと言うのが私の結論です。

長くなりましたがこれがWEST工法に関する私の考えです。

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