2000/6/14 11 スケグの重要性

 スケグとは、ラダーの前についている固定された板で、丁度飛行機で言うと垂直尾翼に当る所です。


 今ではスケグの無い船がほとんどになって来ました。バランストラダーと言いまして、舵軸よりも前方まで舵板が伸びていて、舵軸の回転に必要な力を少なくしているラダーが主流です。舵軸に大変大きなねじれの力が加わるので、普通はステンレスの直径の大きい無垢棒を使って強度を増しています。つまり重いラダーとなります。


 しかし、本当は飛行機の垂直尾翼の様なスケグをつけると、大変直進性が増しコントロールの簡単な軽い船になる訳です。もっと直進性を増大させるには、バラストとスケグを繋いでしまって、ロングキールの大昔のヨットになる訳です。そうすると今度は摩擦抵抗が大きくなって走らない船になってしまいます。有る程度のスピードを保ち続けないと墜落してしまう飛行機には垂直尾翼がラダーの前に有るのは常識ですが、レースで相手を負かす為に急旋回をしたいレーシングヨットにはスケグは不要なものになっています。くるくると三角の頂点をいかに早く回航するかがレースの勝ち負けをきめる訳です。しかし、そんな性能は多くのヨットには必要が有りません。その船の1生の内何回そんな真剣な三角レースをやると言うのでしょう。ほとんどをクルージングに使うのに、クルージングで一番大切な手放し直進性能の大きな部分を担うスケグが無い船は、大変しんどいクルージングタイムをずっと味わい続けなければならないと言う事です。現在市販されている多くの船はレースをする為の船なのです。あなたは本当にレースをしたいのですか?それともゆったりとヨットライフを楽しみたいのですか?



2000/6/22

※上の文章に対して下の様なお便りを戴きました
「保針性といえば,#486以降のデザインではたぶんアホウドリ24よりアスペクト比が非常に高いスケグになっています。その辺を横山様に質問したところ,保針性はハル
の曲率による方が大きいんです。昔の設計ではスケグに依存していたのですが,最新
の設計のものは保針性の良い船型になっていますからこのスケグで十分大丈夫です,
とのことを言われていました。でも,素人の私には,どうもあの細いスケグで十分な
保針性が得られるのか,チョット気になるところです。」

それに対する私の返事は
「スケグの件は横山さんがサバニ船型を言い出してから浮かんだサバニの船で関東自工
が出したレプトンという船が有ります。主任設計者が横山晃さんです。サバニ船型で
す。しかしこれはスケグが無いので、直進性はノラ等にくらべると圧倒的に悪いです
。船型もさる事ながら、やはりスケグは直進性に大いに寄与していると思います。細
くてもフルスケグが必要だと私は思っています。スピードが増せば、前後方向の面積
の広いスケグは摩擦抵抗が増すので嫌われると思います。信天翁当たりからバラスト
もラダーもスケグも昔のサバニとは違って来ました。マストもセール面積もレーサー
にもまけない大きさになり。圧倒的に早くなった分、ウォーターライン下の摩擦面積
を小さくする事に気を配り出したのでは無いかと思います。スピードが遅ければ昔の
方が保針性はよいでしょうね。」

2000/10/19
※下のようなお便りをいただきました


30フィートの横山晃さん設計のアウトラダーのヨットに乗っ
ています。私のヨットにもラダー面積の半分以上有ると思われる
スケグが付いています。スケグとラダーの面積を合わせるとキー
ルの3分の2くらいの面積が有ります。私の船に見慣れえている
と、他のヨットのラダーやスケグが小さく見えます。
 私のヨットは直進性能がよく、安定した風でアビームからクロ
ーズの間では、ラダーは適当な当て舵で固定したままにしてます。
 ラダーを固定していて、ブローがくるとヒールしながらわずか
上ります。多くのヨットは風に立つほど上りますが、私のヨット
はわずかしか上りません。ブローを抜けると当て舵の方が強くな
りベアして元のコースに戻ります。

 私は、スケグが大きく直進性能がよいヨットに乗ってますが、
直進性能とスケグの有無はあまり関係ないと思います。直進性能
といってもラダーがフリーで好き勝手に動く状態の直進性で無く、
ラダーを固定した状態の直進性と思います。ラダーを固定してい
るのであれば、スケグの変わりにスケグの面積を合わせた面積の
ラダーでも変わらないと思うからです。それとてこの原理で腕が
長い方が強くなるので、ラダーが後ろにあるほうが効きがよく、
面積の代わりになると思います。ヨットの場合ヒールしてラダー
が浮くので後ろにあるのがいつもいいとは限りませんが。

 ヨットの場合、ヒールすると推進力が風下に行くので、どうし
てもウエザーヘルムが出ます。それで、多くのヨットは風に立つ
ほど上ります。


 私のヨットは後ろから3分の1または4分の1ぐらいのところ
で「へ」字を逆さにした感じで曲がっています。キールラインも
そうですが、シアーラインも船の曲面の「流れ(と言っていいか
どうか分かりませんが)」も「へ」の字に曲がってます。その船
体がヒールすることで、への字の短いほうが風下に舵を切ってい
るようになり、ウエザーヘルムが少ないのだと思います。

 そんなヨットで少し当て舵を当てておくと、大きくヒールした
ときはウエザーヘルムで少し上り、ヒールが起きると当て舵で、
落ちる

ので自動制御され、全体的にはまっすぐ走るのだと思いま
す。
 ちなみに機走のときはまっすぐ走りません。どちらかにどんど
ん曲がっていきます。

 私はヨットの直進性は、2つに分けて考えるのがいいと思いま
す。1つはウエザーヘルムに対する長い時間間隔の直進性。もう
1つは波などによる短い時間間隔の直進性。ウエザーヘルムに対
する直進性は「へ」の字の船体で作られると思います。短い時間
間隔の直進性はスケグとラダーの効きで作られると思います。こ
れは短い時間に力がかかってもラダー、スケグのためすぐに向き
を変えないからです。

 レプトンの件。レプトンはレース用のヨットですか?もしレース
用のヨットなら、船体は「へ」の字でないと思います。「へ」の字
の船体で舵を切るのは、非常にアスペクトの低い翼で舵を切ってい
るようなものだから、効率が悪いです。そのため、レース艇は「へ」
にしていないと思います。そのため、ウエザーヘルムが出て、直進
性が悪いのではないかと思います。レース艇ならラダーも小さく、
波などでも向きを変えられているかもしれません。

 スケグが有ると「舵利きが良い」、「強度的に有利」というの
が有し、スケグの面積を含めたラダーというのも大きすぎてバラ
ンスが悪いと思いますから、スケグの存在を否定しているわけで
はありません。

※上のお便りに対する私の返信です。

長文のスケグに関するお便りありがとうございます。貴方も私も自分の思いや感
じを書いているのみで、本当のところはどうなのかと言われますと、やっぱり横山さ
んにお伺いするのが一番だと思います。横山さんの理論ですら自然の原理を私たちよ
りも科学的には解明するかも知れませんが、全てを言い表しているとは言えません。
科学が進歩すると又今までになかった考え方が解き明かされる日がきっとやってきま
す。私に言えるのは横山さんが自ずと発見したサバ二船形は、横山さんも言われるよ
うにニタリやウタセやサバニで大昔の人がすでに理論抜きでつかんでいた船形なので
す。直進性は船形で出すと言われる横山さんですので、理論の方もかなり的を得た物
を掴んでいるでしょう。それでもスケグがいかに大事かと言うことは、横山さんも垂
直尾翼のない戦闘機を第二次世界大戦中にドイツで作ったけど乗れるパイロットが殆
どいなかったという逸話から私に説明してくださったことがあります。スケグそのも
の直進性に果たす役割は、空気と水の違いは有るが、ヨットではすごく大切な物だと
思うのです。


 最後の文で、スケグがあると舵利きは悪くなります(回転性は悪い)。強度的に有
利と言うのもスケグをがっちり取り付けての話で、舵は無傷なのに、スケグが脱落し
たと言うような話も有りますので、スケグとラダーは一緒に考えない方がよいと思い
ます。スケグで整流した流れを舵で変えると考えるのが良いかと思います。舵だけだ
と先端にも乱流が起きますよね。

2000/11/6 下のようなお便りをいただきました。

スケグの件は大変おもしろかったのですが、スケグと保針性については
わからなくなりました。いままではスケグ=保針性だったように思いますが。
ちなみに私の船はロングキールですが、ヘルムバランスがわるいので(改造のため)
転進します。


とすると保針性はヘルムの問題とも思えますが。わたしにはもちろんわかりません。
ラダー補強の面ではスケグはかなり有効だとおもいます。(スケグ取り付けが強固として)
おそらくラダーシャフト径を半分ぐらいにできるでしょう。
それからさらにこんらんをまねく事になる危険をかんじますが、
実はスケグというのは舵でラダーはそのタブであるということも力学上ありえる事
らしく、とすればスケグ舵でも急旋回はできるとか、、、、、
バランスというものが大切な要素のようにもおもえますが、私にはわかりませんので
この件のサポートはできません。

※上のお便りに対する私の返信です。
 先にも書きましたように、理論的なことは解りませんので、反論が起きることを省みずに私なりの見解をご披露します。詳しいことは横山さんに聞いてください。
 先ず魚は 殆どが頭でっかちで推進力の主要な部分は最後尾の尾びれに有ります。これは回転性に非常に優れた形だと思います。長距離を回遊するマグロやカツオは頭はそんなにでっかくありませんが、それは長距離用に出来た魚だからでしょう。


 さてヨットはと言いますと、追っ手の風の時でさえもセールから発生した力は押す力ではなく、引く力なのです。登りの時には飛行機の翼のように揚力が発生して引く力が生まれると言うことはご存じでしょうが、追っ手の風の時にもセールのトータルな力点は、ヨットの重心よりも前にあるのが普通です。ましてサバニ船型のように船体の前から2/3位の部分で一番水中に深く入っておれば、抵抗はセールが引っ張る点よりも随分後ろにあることになります。後ろに抵抗がある物を前の方で引っ張ると自ずと直進性は良くなると思います。これが魚のように前に抵抗があると、後ろから押したのではどちらに行くか解りません。つまり、横山さんの言われるサバニ船型は直進性の安定した長距離航海向きのヨットと言うことになると思います。私が随分昔に思ったことですが、この引っ張るセールの力と船体抵抗をトータルにバランス良く配置したのがサバニ船型だと思っています。


 その上で、スケグも直進性に多大な影響を与えていると思います。垂直尾翼がない飛行機は無いように、もし一定の速度で走っていないとヨットが沈んでしまうなら、スケグのない船は無くなるだろうなとSF的なことも考えたりします。

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