139 シェークダウン後の 補修・改良 (2008/08/11)
New Zealand へのシェークダウン(できあがったヨットを実際の航海に用いて、荒れる海でゆすり、実用に耐えうるかどうかテストする事)航海で「花丸」の良い面と悪かった所がよく解った。
船はどんな船でも完成後のテストが必要で、
出荷前にそれを済ませている車や他の機械や電気製品とは大違いです。
出荷前の真新しいヨットを浮かべて荒ぶる海を走ってみるという様なテストはどこの造船所もやっていない。
量産艇ならある程度今まで出た同型艇では問題が起きていないからまあ大丈夫だろうということで出荷する。
しかし、
多くても1000艇 少なければ100艇にも満たない同型艇がどれほどの航海をしたと言えるのか。
やはり本気で外洋を走るつもりなら自分でシェークダウンをやる以外にその船に信頼を置く方法はないと思う。
花丸の場合先ずは進水して一年ほどはその当たりをデイクルージング。
近くの漁港で行けるところはみんな行ったと思う。
僕のためにオーダーした図面で
僕が自分のために木で作った船だから世界中探しても同じ船は存在しない。
だからまあこれくらいで良かろうと思ったところはことごとくといって良いほどやり直す羽目になった。
翌二年目は北海道南岸を含む本州一周クルージング、
この時も小さな問題箇所がいくつか見つかり補修した。
そして3年目は前半に一人で九州一周
この時はハンディー冷蔵庫を取り付けたのでソーラー発電の充電が間に合わずバッテリーを二つだめにした。
後は台風に遭い日頃全くじゃまになり重いだけの台風のための舫ロープや擦れ止めなどはどうしても専用のものを積まないといけないと思うようになった。
そして3年目の後半船検の航行範囲を遠洋に切り替えて(桜マークの付いた世界レベルからすると圧倒的に高い備品を積むだけ)いよいよNew Zealand へのシェークダウンに乗り出した。
最後のNew Zealandへのシェークダウン航海で問題となったところは
1番はメインマストのスプレッダー
これはマストを工房に持ち帰り全てのワイヤー類を取り外しスプレッダーも外して補修しました。
そしてスプレッダーのワイヤーが当たる部分にアルミニュームの擦れ止めを入れ、
マストのスプレッダーが当たる部分には下がり止めの駒を4つも取り付けました。
図面にはスプレッダーを下から支える駒もなかったのですから
まあ壊れて当たり前かもしれません。
2番目はマストを支えるワイヤーを止めるチェーンプレート金具からの水漏れ
シーカフレックスは隙間に充填するように用いて
しかも金属もエポキシもしっかりと油取りの洗浄をした後
プライマーを塗る必要があります。
デッキからの漏水は木造艇にとっては短命の原因になります。
3番目はステンレス金具の曲げ弱さ
常に折り曲げては元に戻すような力がかかり続けるブームベール金物は
8ミリもの直径があるステンレス丸棒がドカーンという大音響とともに日を置いて2箇所も千切れました。
まさかあの太さのステンレス棒が千切れるなんて信じられない事でした。
この部分は布ベルトに替えました。
そして
ステンレスワイヤーもメインシートトラベラーやミズンシートトラベラーや
ガフブームハリヤードのガフブームに取り付けたワイヤーやピークハリヤードブロックを固定していたワイヤーなど動く部分は ことごとく切れました。
大きな部分はそのくらいですが
天井に生えたカビ
トイレのバルブ類がみんな緑青が吹いたようになっていること
強烈なヒールとパンチングで棚から対衝撃皿が 飛び出して二つも粉々に砕けたこと
数え あげたらきりがないくらい細々とした 不備な点が見つかりました。
良い面はというと
先ず一番は船体の堅さでしょう。
図らずも巻き込まれてしまったサイクロンで9メートルを超えるような波の中でも
全く安心して居れました。
船体に波が体当たりしてもドンという衝撃は有るのですが
全く船体が歪みません。
FRPの船では少しの波でも起きるミシミシという木が擦れ合うような音は全くしないのです。
船体が歪んでいない証拠です。
波の衝撃後のあの嫌なブルブルとふるえる感じも全くしません。
2番目は木の断熱効果です。
船体を白塗りにしたせいもあるでしょうが夏の暑さも中くらいと言うところです。
そして3番目は見かけによらずクルージング艇とは思えない素晴らしいスピードを手放しでウインドベーン任せで出せるということでしょうか。
操船のしやすさは一度帆を上げトリムをすると手放し直進してくれるのでもうすることはないのと言うくらいなにもしなくてよくなること。
出入港以外は舵に触ることはほとんどありませんでした。
ということで一応「花丸」のシェークダウンはこれでおしまいと言うことにします。