140 だんだん陸の人間に戻る (2008/08/14)

ヨットで航海をしていると陸の生活をそのまま海には持ち込めないので海人間になる。

 

先ず自然(特に気象)に非常に敏感になる。
絶えず空を眺め雲を見る
スコールは来て居ないか今からの天候はこの先どうなるのかずっと考える様になる。

海の向こうのちょっとした雲にも神経を集中させる。

ヨットで一番大事なのはそのときその場の天候です。
天候さえ味方につければどんな長距離航海も
日頃どんなに荒れると言われる海でも楽に航海することが出来ます。

 

そして

時間的な束縛を他人から全く受けない生活。

陸上で曲がりなりにも社会生活を営もうと思うとやはり時間に縛られることになる。

海では他人は居ないのだから太陽が出て沈むので時間を感じはするがそれによる何の束縛もない。
時計の針は何の意味も持たなくなる。

唯一オケラネットのアマチュア無線に出る時刻が時間に縛られたときでした。
今回の航海はそれしか世間との通信手段を持たなかったので毎日の様に定期交信時間には無線機のスイッチを入れた。

 

それと

ヨットそのものがどんな状態にあるのか常にあちこちヨットの状態を見て回る。

そして問題を発見すれば出来るだけ早く修理する。

ワッチ(見張り)の仕事は本船を見つけたり漁船を見つけたりたまには流木を見つけたりという文字どおり船の外部を見張るというのもありますが、
今自分の船がどんな状態にあるのかという事を見張るのも大切な仕事です。

そのためには目、耳、鼻、手触り、味覚、そして第六感をも使って船からの情報を読みとろうとします。

全ての船の状態を把握していて初めてのんびりと読書や思索や遊びが出来るのです。

 

 

陸上での生活と大きく違うのは水の使い方でしょうか。

大きなヨットでも毎日真水のシャワーを浴びるのはそれなりの設備(造水機)を持っていないと出来ないことです。
ましてや食器洗いや洗濯などは長距離航海中真水でする船はほとんど居ないでしょう。

毎日水道の蛇口から水を流しっぱなしで顔を洗ったり体を洗ったり皿を洗ったりが普通の陸上の生活はヨットでは無理なのです。

 

お金は全く使い道がないのでそのことは頭からはずれてしまいます。

 

こうして海の生活を考えてみると不便この上ないとも思えるのですが、
これが又たまらなく豊かで
適度な神経の高ぶりと安らぎが伴い僕にとっては海は最高の空間の様にも思えます。

でも一生涯海で過ごすというのは人間には無理なことです。

たまにそう言う生活をするから新鮮で楽しいのかもしれません。

原始人が持っていただろう生命力をくすぐるものがあります。

 

まだリタイヤするには若すぎる僕は
New Zealand へ半年ほどの航海で「花丸」の完成を 確信し仕事をするために松山に帰ってきました。

陸の生活2ヶ月とちょっとで早くもだんだん陸上の人間に戻りつつあります。

水はジャブジャブ使うし
天気はテレビの天気予報だよりです
おまけに外的な刺激に無神経でいられます
まともな仕事もしていないのに時間には束縛されます
仕事をしていないので陸上で生活するため毎日必要なお金の事も考えないといけません

花丸にもずっと乗っているわけではないので整備が終われば台風の時以外船のことは考えなくなるでしょう


良きにつけ悪しきにつけ陸上人間に戻りつつある今日この頃です。

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