151 小笠原へ青い海を見に-2 (2009/08/22 )

 6月17日土佐清水港で夜が明けないうちに目が覚める。(04:00)

今日出港すべきかどうかと考えたが、
出港を取りやめるような理由は何もない。

天気も良く台風も発生していない。
今年はどうも台風が出来るのが何時もの年より遅いように思う。

今がチャンスだ。
出港と決めて早速エンジンを掛け暖機運転。

昨日のご飯の残りでお茶漬け。
僕は料理にあまり興味がないし何を食べても美味いと感じるので一人の時はもちろん家でもあまりやったことがない。
お湯とお茶漬けの素と梅干しだけの朝食は味気ないがそれでも美味いと感じる。

薄く日が明けるとともにC-mapを頼りに漁協の荷揚場を右にみて狭くて曲がりくねった土佐清水港の入り口を目指す。

最後の赤灯台をかわすと外海はかなり波があることが解る。
一瞬引き返そうかとも思ったが又どうせ明日も天気が良くて波がないかどうかは不明だ。
入港の時があまりにも天気が良くて波が無く風も理想の北西だったのでためらった。

出港してしまえばもう走りきるしかない。
半分観念してそのまま外洋に向かう。

過去100年の風と潮の流れをデーターとして集めたパイロットチャートという海図があるが、
その電子版であるVPP(Visual Passage planner)でみるとこの時期小笠原までの航海は最初は東風、
小笠原に近づくに従って南気の風が多くなる予定だ。

予定通り最初の4日ほどはアビーム(横からの風)か少し前方からの風を受け快調に進んだ。

梅雨かなと思うくらい雨の日が多かった。

初日は32年ぶりの単独航しかも一番本船密度の高い日本近海とても眠る気にはなれなくてずっとコクピットでワッチをする。
夜明けまでには何隻もの本船の明かりを見た。

一人で出港すると直ぐにビールを飲んで寝てしまっていた若かりし頃の無謀さはもうかけらも残っていない。

おっかなびっくり眠くなるとキッチンタイマーを20分にセットして20分の眠りを何度か繰り返すと一時的には眠くなくなる。
20分というのは水平線のむこうにぎりぎり見えている25ノットで走る本船がまっすぐこちらに進んできたとしても当たらないと思える距離である。

本当はレーダーを点けっぱなしにして警戒範囲に本船が入ったら警報を鳴らすというのが一番良いのだろうが、
レーダーはまだまだ電気をたくさん消費する航海計器だ。

レーダーディテクターという車のねずみ取り警報機のようにレーダー波をとらえると警報を発するというものもあるが、
ねずみ取り警報機ほど安くて信頼が置けるものではない。

二日目くらいからは時々周りを見渡すくらいのゆったりとしたワッチに変え、
無事に本船の多い海域を乗り切っれたことを喜んだ。

それでも一人の航海では何かあったときに対処できないと困るのでアルコールは全く飲まない。
欲しいとも思わなかった。
僕はアル中ではないことを知りうれしくもあった。

いよいよ小笠原に近づくと
入港一日前の6月22日

真っ白で尾っぽが異常に長いボースンバードを発見。
陸に近いところにいる鳥なのでもう島は近いなと思う。
この鳥は時々ケンケンの疑似餌を小魚と間違えて食いつきそのまま空中に舞い上がって釣れたりする鳥だ。

だんだん風向が南に回り真向かいの風になるが風力は4前後なので波も小さく走りやすい。

そしていよいよ小笠原父島に帽子のようにかかる塊の雲を水平線に発見した。
それはあっと思う間に近づき陸地の緑が見え始めた。

さあいよいよ入港。
有り余る真水で体を洗いひげを剃り入港準備。
一年ぶりの父島だ。

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