156 「天城」レストア-3 (2010/04/24)

スタートしてから8ヶ月「天城」レストアもいよいよ佳境に入った。

悪いところは徹底的に壊して取り除き新しい材料で作り替えた。

最初は一番大切な船穀を丈夫にすることに先ず集中する。

昔は二層の外板をリベット止めしてあったのだがもう40年以上も海に浸かっているリベットはいかに銅製とはいえ弱くなっていると思われるので、
リベットの隣に木ネジを入れた。
1600本の木ネジ打ち込みはエアーインパクトドライバーを使わなければとても一日や二日で終わる仕事ではない。
あまりに酷使したのでエアーインパクトドライバーも音を上げ分解修理に出した。

フレームも腐っている部分は取り除き新しいケヤキをフレームの曲がりに切り出して入れる。
その前に外板内側の腐っている部分を交換してからだ。

船体右側には腐ってスポンジのようになった外板が前後方向に5枚ほど有りそれも一枚ずつエポキシ接着をしながら交換した。
左舷船底には舟食い虫が穴を開けた外板がありそれもエポキシ接着と木ネジで接着して交換。
その後船体全体をフェアーリングして低粘度エポキシでガラスクロスライニングを施す。
これで船底は舟食い虫から木を守ることができ船体は小さい傷がいきなり木に達するのを防ぐ。

その後船体外側はインタープロテクトという水を通さないエポキシを塗って仕上げる。

水線上の船体には凹んでいる部分にパテをつけフェアーリングの後サフェーサーを吹きボードサンディングでフェアーなラインを出す。
まだまだ綺麗な曲線は出ていないのでもう一度インタープロテクト・サフェーサー・サンディング・パテ付けを繰り返すつもりだ。


次はデッキで半分から前の部分は以前のレストアで合板も生きていたがドッグハウスとの接点が腐っていたのでデッキ全体を新しくすることになる。
全部取り払って新しく切り出したケヤキのデッキビームを取りつけることになる。

デッキビームと船体のフレームをガセットで繋ぎ、デッキにロシアンバーチの6ミリ耐水合板を2層エポキシ接着。
がっちりしたデッキが出来上がる。

デッキも低粘度エポキシでガラスクロスを積層して小さい衝撃では合板が傷つかない様にする。
フェアーリングは船体と同じようにマイクロバルーンエポキシパテで修正する。

デッキにも水を通さないインタープロテクトというエポキシを塗った。


そしていよいよ内装にかかった。

全てのフレームと船体外板の接着部分にマイクロバルーンエポキシフィレットを付けることから始める。

補強兼区切りとなるバルクヘッドを入れ
船首から船内工作にかかる。
船首はトイレが付くだけで何もないオープンスペース。
後でアンカーチェーンとロープを収納するための箱を造ることになる。(それはチェーンロープの現物を見てから)

その後ろはハンギングロッカーと船内ストーブを取りつけるバルクヘッドだがまだ何もしていない。

それからメインキャビンだがこの部分は変更もありと言う事でエポキシ接着剤は使わないで木ネジだけで作り付けることになる。
左右にバースを造りそれに合わせた床材を止める根太を取りつける。
船首からメインキャビンまでの床板もロシアンバーチ9ミリ耐水合板で造った。

細かい仕事はまだまだ残っている。
背もたれやフレームに取りつけるチークのバラ板、
それにメインテーブルやマストサポートやデッキの下に結構大きい物入れの棚が付く。


それらの仕事を残したままギャレー部分の制作にかかる。
この辺りはヨットでの生活の仕方も40年前とは随分変わってきたので昔の図面通りではなくオーナーが図面を描いてくれることになる。

天城は古い船なので33フィートもある船にしては横幅が狭いだからエンジンカバーとそれを挟むギャレーとチャートテーブルの配置には苦労する。
ほんの数センチの違いが使い勝手を大きく左右するだろう。
オーナーは図面描きに頭を悩ませる所だ。

現在大まかにギャレーは出来たがチャートテーブルの寸法でつまずき保留中。
僕は手が止まり仕事が進まないで考えて居るといつまで経ってもヨットは仕上がらないので別の仕事に移る。


コクピット制作図面から寸法を拾い出し元の通りのコクピットを造る。

今は合板を張る前の桟木を組み立てているところだ直角ではない部分もありなかなか難しい。

細かい仕事は山のようにある。
仕事の手を止めないで毎日少しでも進めると終わりが近づく事になると信じて次々に仕事をこなす。
先が見えないと不安だがいくらでも仕事があるという状態は僕にとっては楽しいことだ。

難問を解決しつつ天城が蘇っていくのを楽しみに仕事に励む。
僕にとって仕事とは遊びと同義語だ。
苦しくても立ち止まらないことで楽しさが味わえる。



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