163 (シーマンシップ)ー風向を読む  2011/10/22

僕の花丸には一切の風向計がありません。
マストトップに取り付けるウインデックスもステーによく取り付けてある風向を見るための毛糸も無しです。

それでも間違いなく必ず風下で用を足します。

一緒に花丸に乗った人は不思議がります。

でも何の不思議もありません。

僕には常に風向が見えているからです。

僕は船に乗っている間中時々海面を見ています。
海面には何時も風によって波が立っています。

帽子が飛びそうな大風の時は誰も風向を見誤ることはないのですが、
微風の時の海面にも風による波が立っています。

そのさざ波を一度じっくりと見つめてみて下さい。
その風向を知る為の訓練は池でも水溜まりでもとにかく水があればやれます。

一つの波の形は扇子を広げたような形です。
そんな扇子が一定方向に向かって何層にも折り重なって広がっている海面が見えます。

その扇子を開く軸から扇子の円弧の中央を結んだ線が風向なのです。
軸から扇を広げた円弧中央へ向かって風が吹いています。

船の右を見ても左を見ても船尾も前方もびっしりと海面に張り付いた扇子が見えます。

風下のジブセールやメインセールに影響された海面はそれなりに風向が他の海面と違っているのが解ります。

レースで速く走るための機械や器具を使った風向認識には遠く及びませんが、
風下で用を足す方がよほど大事なシーマンシップです。

強風の時は真の風下に向かってオシッコをしてはいけないと言うことも覚えておきましょう。
上体がちょうどブランケットとなり小水がブランケットに吸い込まれて上半身びしょ濡れという哀れなことになります。
ちょっと体を斜めに構えれば巧くいきます。

第六管区(瀬戸内海)に勤めていた海上保安官が言っていましたが海の遭難死亡事故の内80%の人はズボンのチャックが開いているそうです。
風向を読めるようになっても船の立ちションには気をつけて下さい。

 

そんな原始的な風向の読み方が出来る様になっただけでセールの角度に随分自信が持てる様になること間違いなしです。

次の段階では夜さざ波が見えない時の風向の探り方。
それは襟を落として360度どの方向からも首に風が当たるようにして首に当たる風を読みます。
これは多少の訓練がいるでしょうが慣れれば出来る様になります。

シーマンシップは精神論ではなくそうした小さいと思われがちな一つ一つの技術の積み重ねなのです。
シーマンシップが船と人を海難から守ります。

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