175 ヨットのプロペラ 2013/03/14

「花丸」に最初どんなプロペラを付けようかと思った時 高澤製作所というプロペラ専門の会社に相談に乗ってもらい、
2翼固定のプロペラを作った。

3GM30Fという「花丸」に載せるエンジンの仕様と船の船型図面を送った。
プロペラの形状を決めるのはエンジンと船型によると教えられた。

出来上がってきたソリッドプロペラはダイヤ450ミリメートル・ピッチ260ミリメートル翼だった。

北海道函館入港を含む本州一周などしばらく走っている間にヨットは当然機走よりも帆走時間の方が長いよなと思うようになった。
つまり帆走時のプロペラによる水の抵抗が気になり出した。

どのくらいかと調べて見たら20度摂氏の水で密度が空気のおよそ800倍だと知る。

そこでソリッドプロペラのプロペラ面積を測り800倍すると何とコンパネ(900ミリメートル×1800ミリメートル)14枚分にもなる事が判明。
それでは抵抗が多すぎだとと帆走時にはプロペラを折りたたむ事が出来るフォールディングプロペラに取り替える事にした。


フォールディングプロペラはダイヤ406ミリメートルピッチは270ミリメートの物を選んだ。

これでその後のニュージーランド往復航海や種子島・屋久島を含む九州一周そして小笠原父島を含む四国一周などの航海をした。

凄く調子が良かったがダイヤとピッチの選び方を間違ったものか艇速が出ない。
水線長速度と言われる速度が出ないのが悩みの種だった。

別にエンジンレースをする訳ではないし多少遅くても良いかと思っていた。

又フォールディングプロペラにはそれなりの良さがあった。
瀬戸内海で多い海面下1メートルくらいに漂う買い物袋の白いナイロンを引っかけた時に、
潜って取らなくても前進後進を何度か繰り返せばたいていの場合ナイロン袋は取れてくれた。
ソリッドプロペラは冬でも潜るしかなかったのでそれは有り難かった。

次に転機がやってきた。
僕が去年修理を終えた「竜王」37フィートを関東に廻航する時にオーナーであるファーストマリンの関口社長に乗せて下さるようにお願いしていた。
古いハード V ディープワインシェープの重たい船に乗った事がなかったので乗ってみたかった。

「竜王」には3枚翼のフェザーリングプロペラが取り付けてあった。
エンジンは僕の「花丸」と同じ3GM30Fを新しく積み替えていた。

何と1700回転くらいしか回していないのに7.5ノットを超えるスピードが出ていた。
それ以上回転を上げると黒煙が出ていたので多分僕が設定したプロペラのピッチが強すぎたようだ。
それにしても僕の「花丸」よりもオーバーハングが前後とも長くて美しい が水線長は圧倒的に短いし重量は「花丸」の倍近くある「竜王」がまさかそんなスピードを出すとは思わなかった。

フォールディングプロペラをフェザーリングプロペラに交換すると決定づけたのは去年の淡路島サントピアマリーナ木造ヨットレースからの帰り、
北西の強風でインナージブセールをズタズタに破いてしまいエンジンだけでは進めなくなり「佐柳島」(香川県多度津沖の小さい島で港が2つあり南側の港)に逃げ込んだときのことです。

桟橋に風下側から泊めようと近寄ったのですが港の中でも強風が吹き荒れておりあっという間に風下の岸壁に船首を吸い寄せられるように流されました。
何とかしようと後進に入れて目一杯エンジンを吹かすのですが全く後進しないでどんどん岸に近づきました。
このままではぶつかってしまうと船を斜めにしておいて思い切り前進に入れると同時にエンジン前進全開で急舵を切りぎりぎりで岸壁から脱出しました。

その後桟橋の風上側に「花丸」を入れた時には風に押されて30度以上ヒール浮き桟橋に押しつけられて動けない状態になりました。
心臓がドキドキいって瀬戸内海では最悪の思い出が出来ました。

フォールディングプロペラは普通の時はエンジン回転数を固定翼より少し余分に上げたら後進します。
ところがエンジン回転を上げれば上げるほどプロペラをすぼめる方向に力がかかり遠心力で開いている分厚い翼も閉じる方の力が勝つのです。


今度の二翼フェザーリングプロペラはダイヤ430ミリメートルピッチはフェザーリングだから可変ピッチです(0度から2度刻みに30度まで設定できる)

前進  後進


初めてなので一回で角度が決まるとは思っていません。
最初は先の固定翼とフォールディングプロペラよりも3度くらいきついくらいの角度24度を選びました。

これが大当たりいきなり2000回転で今までの最高速度6.5ノットが出ました。
ゆっくり回転を巡航速度の2600回転にすると7.87ノットになり「花丸」機走最高速度をマーク。
マリーナから柳原まででしたが今までとは圧倒的に違う速度を味わいました。

トランサムに取り付けてある水面から30センチも上に有るエンジンの排気口が今までより5センチくらい余分に沈み込みもう海面ぎりぎりになっています。

さてしばらくはこのフェザーリングプロペラで調整します。
通常のエンジン回転数(共振する部分を避けて)をいくらにするか。
前進後進の効き具合。
などを覚えるつもりです。

重要な事ですがプロペラの端と船体の隙間は出来れば100ミリくらいあった方がよいそうです。
あまり隙間が狭いとプロペラがかいた水が船体に当たりとんでもない振動が出るそうです。

今のところまだフェザーリングプロペラの欠点を知りません。

最初から値段は高いがフェザーリングプロペラを付けておけば2度おきに角度を調整して一番良いその船とエンジンに合ったピッチを探す事が出来たので無駄遣いをしないで済んだ物をと今になって思います。

花丸はセーリングでは8メートル/s(白波が立ち始める風風力4)も風が吹けば追っ手なら直ぐに10ノットを出す事が出来る性能を持っています。
瀬戸内海ではあっという間に陸置が近づくので滅多にそんなスピードは出せません。

しかし、夏の瀬戸内海では風が無く殆どエンジンで移動しているので機走速度も気になるところです。


仕事としてフェザーリングプロペラの販売や取り付けも手がける事にしました。

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