192 家大工と船大工 2014/012/26

長男が独立してジュエリー屋「Mast Original」を始める事になりました。

丁度ヨットの仕事が切れたので引っ越しの前の家の改装から手伝う事にしました。

二階にウッドデッキ物干しのベランダを作ったり、
一階の壁を壊してワンフロアーにし 壁や天井を塗り替え 床を張り替え 天井の縁回しを回し 床と壁の縁回しを取りつけた。

電気器具も今までとは違う取りつけ方に変えたのでその部分の配線も変更。

外部では表の壁を塗りかえたり、
壁に穴を開けて郵便受けを付けたりしました。

彫金には細かい金属加工と 金属のバフ磨きという大きな部分を占める仕事があります。

そこで強烈な集塵機とコンプレッサーも必要になります。
それらは大きな音がするので家の外部にある物置を集塵機とコンプレッサー置き場にしました。

スペースが小さいので上下二段に分けて下を集塵機、上をコンプレッサー置き場にしました。

そして小さい物置全体の壁に防音材を貼り付けて外に大きな音が漏れないようにしました。

彫金屋さんは何故が朝早くではなく夜遅くまで仕事をするみたいなので夜の騒音は困りものです。


色々頼まれた家の改装をやってきて思うのですが、
家は分業で出来ているんだなあとつくづく思いました。

今は大分様子が変わってきているようですが、
昔は大工の棟梁が居て家を一軒建てる事をまるまる請け負いました。

そして土木工事から始まり木材を刻み棟上げをして屋根の下地を作り瓦を乗せ内装工事にかかります。
内装工事も分業で壁をする人 電気配線をする人 左官工事をする人水回りの工事をする人 と細かく分かれて大工の棟梁の指示通りに仕事をします。

今はもっともっと仕事が細かく分かれ専門家の集団を工務店が束ね、
しかも工場でやれる事はほとんど工場で終わらせて家の部品として持ち込むので見る間に家が建ちます。

木工をする大工も組み立て屋と化しました。


その点小さいヨットは大変です。

何もかもほとんど一人でこなします。

スペース的に何人もたかって仕事をやれるような環境ではない事もありますが、
家のように数が出ないので分業が出来ていません。

量産艇でさえも100艇も同じ船が浮かべば良い方で、
人と同じ物を持つのは嫌だというオーナーのわがままもあるとは思いますがとても量産と言えるような状態ではないのです。

しかも一目でわかる家との違いは家は直線と平面で出来ていますが、
ヨットには直線も平面もほとんど無くて全てが一定でない曲線と均一でない三次曲面で構成されています。

おそらく木の製材から始まるヨット作りは同じ面積、同じ体積で比べると家作りの数十倍数百倍の労力が必要なのです。
坪単価いくらの家という言い回しがありますが、
ヨットの場合重量当たりの単価を昔は言っていました。
今は太い部材を使い重くて丈夫という考えは無くなり軽くて丈夫で速く走ると言うのを求められます。
重量当たり単価という考えは通用しなくなりました。

良い物を作るにはとにかく手間がかかるのです。
時間当たりどのくらい速く確実に仕事をこなすかという事が求められます。



木造ヨットでは材料の入手もほとんど加工されていない原材料の加工から始まります。

船穀が出来てもデッキやマストやその他のセーリング設備。
エンジン関係・ギャレー・トイレ・あらゆる部分をほとんど一人でこなします。

と言う事は家の専門職と違い個々の仕事の専門家にはなれないと言う事です。

僕は一応木の船を作るヨット大工と言う事になるんでしょうか?

船穀の強度材として木ネジもボルトナットもリベットも無くエポキシ接着だけで船穀やデッキを作りフィレットで補強して本物のWEST船が出来る。
船大工でも僕は特別変わった船大工なのです。
口の悪い人はエポキシ大工と呼びますがその通りなのです。

永遠に時間があるなら遡ってシングルプランキングやストリッププランキングやリベット工法やコンスタントキャンバーやカーボンプリプレグ等もやってみたいとは思いますが、
何しろ時間が限られてきました。

後は今まで身につけたヨット作りの技術を駆使して作った自分の船と海で生き残る技術を頼りに長期航海に乗り出すのみです。

海の広場に戻る

homeに戻る