195 エンジン排気について考える  2014/08/23

ヨットのエンジン排気はほとんどの場合何故かウォーターロックシステムを使っている。

エンジンから出た排気パイプをダブルパイプにしてエンジンを冷却した冷却水を排気パイプの外側に注入しいきなり排気パイプを冷やす。(ミキシングエルボと呼びます)

次にミキシングエルボより下の位置で エンジンからの排気と冷却水をミキシングした温かい海水混じりの排気をウォーターロックという空間に送り込みます。

これは実によく考えられたもので 冷却水混じりの排気をウォーターロック空間から排出するのは エンジンから来た排気パイプとは別にウォーターロックと言う密閉された容器の底から別の排気パイプを立ち上げ、
ウォーターロックの底に溜まった冷却水が排気の圧力で押し出される仕組みになっています。

ヤンマーエンジンによると下の様なシステムです。

何故このような難しいシステムにしたかというと、

1つはヨットは漁船や貨客船などの様に真上に排気の煙突を立ち上げ排気するというわけにはいかない。
マストやブームやセールやそれらを扱うための道具やロープでデッキには煙突を立ち上げる場所がありません。

それとヨットの場合重量物はなるべく低い位置にと言う事で、エンジンは船底の低いところにあるのに船尾に行くに従って船体は徐々に上がっています。
おまけにコクピットという操船の為の場所が普通はエンジンの後ろに有り一段デッキよりも下がっています。

だからエンジンからストレートに高温の排気管を船尾まで持ってくることは難しいのです。

フレキシブルで高圧・高温にある程度耐える様な排気ホースを使って冷却水とミキシングされた排気(100度以下)を船尾へ導きエンジンの排気圧力で船外に排出します。


最近そうではない排気システムをカナダ在住のヨット「ハーモニー」のブログに見つけました。

面白いので毎朝チェックに行く生駒さんのブログです。

無断で写真を引用します。
生駒さんお許しください。

これは「ハーモニー」のエンジン場見えるところに誰でも解る様にぶら下げていると言うダイアグラムです。

多分普通のヨット乗りはこれを見ても気がつかないでしょうが、

僕は昔52フィートヨットの艇長をしていたとき優秀なエンジン屋さんが排気をこのシステムに変更すればエンジン馬力が上がるよと言われ実際にこのシステムにやりかえた事があるのです。
彼は自分でこのシステムを考えたようですが、
カナダにある「ハーモニー」にそれが使われているとは思ってもいませんでした。

100馬力近いエンジンで最高速度12ノット(瀬戸内の本船が走っている速度)くらいで走る船でしたが排気システムを変更したら0.5ノットくらいスピードが増し、
おまけに排気音がストレートでこもらなくなり良い事ずくめでした。

これをまねて熊本県の自作艇で「回生丸」田山さんも同じシステムを10年ほど使ったと言います。
最後はステンレスの溶接部分が水漏れしだしてこのシステムを止めたという話しでした。


生駒さんに問い合わせ 何度も助言や写真を戴き僕の花丸もこのシステムに変更しようという気になりました。

個人的にこんな寸法図まで送って頂きました。

生駒さんにはお手数をおかけしたことをここで感謝申し上げます。


さあ今からこのシステムを作る事における問題点をと考えた時エンジン排気口直ぐ後の{特殊フレキ管}というのが手に入るかどうか、

現在手を尽くして探しています。

それと最重要課題はステンレスの溶接です。
排気が内側を通りそれを冷やす冷却海水が外側を通る二重パイプを作る事と、
最後の立ち上がりの直径200ミリメートル長さ400ミリメートルで上から冷却海水を入れ排気口を冷やしながら海水を排出する部分。
これらの溶接はきちんとした職人でないと難しい部分でしょう。

肉厚のステンレスを使いきちんとした溶接が出来る人に頼んで作ってもらうつもりです。

 

出来上がったら又次回「海の広場」で報告します。

海の広場に戻る

homeに戻る