2000/4/6 2 出艇回数に付いて

 ようし、今からヨットに乗るぞと決めてヨットを買う訳ですが、その決心もだんだんにぶって来ます。その第一の原因はヨットに乗るにはどんなに省略してみても煩雑な仕事がいっぱい有るからだと思います。舟を出すには少なくとも、もやいを解いたりフェンダーを収納したり、セールカバーを外したり、セールを上げたりしなければなりません。また帰って来たら、セールを片付けてセールカバーをかけ、フェンダーを入れ、きちんともやってからビルジを確認し戸締まりをして帰らないといけません。自分の家でさあヨットに乗りに行こうと思い付いて、10分以内にセールを上げて帆走をしている人が何人いるでしょう。おそらくずっと前から考えて一大決心をしないと舟の有る所へさえも行けないのが現状でしょう。


 おまけにたいていの人は自分1人で乗れる舟を選んでいないので、何人かの友達を誘ったり、クルーに連絡して時間を合わせたりしないと出航出来ないとなると、これはもう一大決心と 皆の都合の合った、年に数回の出艇になるのは当たり前です。しかし一方では、暇がたっぷり有って必ず週末にはヨットに来ている人も居る訳です。そんな人が出航しない原因は、出航すれば煩雑な仕事が待っているからでしょうか?それとも1人では乗れないヨットを持ってしまったからでしょうか?出航しないでもヨットに来ているだけで楽しいからなのでしょうか?私にはその全部が言えると思えます。


 人間には習慣によって動いている面が有ります。朝は何も考えないで起きたらすぐにトイレに行くとか歯磨きをして顔を洗うとか、いちいち考えないでやっている事って有るでしょう。(毎日どうして顔を洗うのか、歯磨きは何故やらないといけないのか考える人はいないでしょう)あれと同じで、出艇する習慣を身に付ければ良い訳です。必ず週末にはヨットに行く、そして必ず舟を出す習慣を身につける事です。1人で出せない様な舟なら買い替えれば良いのです。煩雑な仕事はなるべく省略出来る様に改造や工夫をする訳です。そしてなるべく長く1人で海の上にいるのがヨット上達の秘けつなのです。設計の横山晃さんが、「舵」誌1983年11月号から1984年6月号までの記事の中に『海で生き残る条件』と言うのを書いていますが、要約すると良い舟で、なるべく長く1人で海の上に居なさいと言う事です。飛行機のパイロットや舟の船長の力量は責任者としての乗艇時間で判断します。個人差も有るでしょうが、おおむね船長を長く経験すると言う事は、あらゆる困難に打ち勝つ判断力が出来ていると言う事なのでしょう。体力のピークは24歳か25歳まででしょうが、ヨットと言う遊びは体力以上に知力が要求される遊びなのです。あなたの船長としての乗艇時間は何時間ですか?私はヨット暦10年だ20年だと言う人が居ますが、さてそのヨットマンと称する人の船長としての乗艇時間は何時間なのでしょう。普通の人が免許を取って1年間に車に乗って運転している時間よりもずっと短いのでは無いですか?いわば二葉マークでしょう。ヨットの世界ってそんな人ばかりなのです。


 花々しく取り上げられるレースの世界や、声の大きい人だけが目立っている日本のヨット界ですが、本当にヨットを楽しみたいなら。人と比べないで自分が海にマッチする能力を身につける事です。師匠は海です。あなたと海だけの世界を作りだせたらしめた物です。


 さああなたの10年後20年後の船長としての腕はどうすれば上がるか解ったでしょう。自分に合った舟を持つ、なるべく長く海に教わる、これしか無いのですよ。

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