204  「花丸」整備

進水して11年になる「花丸」に乗ることによって普通のヨット乗りでは気がつかないことに色々気がつき整備をしたので書いておこうと思います。

「花丸」の船体はマホガニー材で作られています。
エポキシ接着の斜め3層張りでトリプルプランキングという工法です。

昔は木の間にペイントを塗った紙を挟み大量のリベットでカシメて作られていましたが「花丸」はエポキシ接着でハードスポットが出来ない工法です。
もちろんフレームと船穀の接着もボルトナットではなくエポキシ接着です。
おまけにフレームと船穀の接着角にはマイクロバルーンエポキシのパテフィレットを入れ強靱なウエスト工法です。

表面はガラスクロスという向こうが透けて見えるような薄いガラスの織物に低粘度エポキシを染みこませてコーティングしてあります。

工法が良かったのか木部船体に関しては浮遊物にぶつけたところや擦ったところ以外には問題はありません。
もちろん11年も乗ったのですから傷が出来たところは修復しながら乗りました。


船底の鉛バラスト取りつけボルト ナットを入れて締め付ける横穴から 上架した時に海水がにじみ出てくるので、
バラストに開けた横穴をエポキシパテで埋め海水の浸入を防ぐ様な事は何度かやりました。

バラスト取りつけボルトを留めてあるキールの穴を伝ってキールに海水が染みこんだ恐れもありますが今はバラスト横穴からの水のにじみは無くなっています。

船内ビルジ溜まりには一滴の海水もなくドライです。

何所か暗礁に乗り上げるとかぶつけるとかはやった事がないのですが、
少々の衝撃なら鉛バラストが凹んで衝撃を吸収してくれるだろうと安心しています。


問題は紫外線と雨風に当たり続けるデッキとマストとバウスプリットです。

デッキはカナダの白樺で出来た耐水合板を使っています。
接着材が日本の耐水合板と違い信頼性があり2年くらい真水の中に浸けても表面と木口が腐るだけで接着面は水を遮っていますので内側の木は腐っていません。

それでも「瀬戸壱丸」の野中さんの例と同じ様にデッキのガラスクロスライニングにヒビが入り合板の表面に常に雨水が溜まった状態で黒ずんだ所が出来ました。

雨水は真水なので木の中に浸透するとバクテリアが湧いて木を腐らせます。(合板でも同じです)

早い内にもう一度(ニュージーランドから帰って直ぐにデッキの剥がれた部分を補修しています)船全体のデッキ部分を見直す必要があります。

バウスプリット根っこの部分はこの間腐っていたので総入れ替えをしましたが、
メインマストやミズンマストやそれらのスプレッダーなども非常に柔らかくて水に弱いスプルース材で出来ており一度リギンを解放してマスト類を降ろししっかり確認する必要があります。

バウスプリットはステンレスで覆われた後ろの部分確認が出来ていないので一度抜いてみる必要があるでしょう。


それともう一つ外洋の大波が当たれば船体に傷が付かないように壊れて無くなって欲しいと思い日本製2.5ミリ耐水合板で作ったハードドジャーです。

ステッチ&グルー工法で作りました。

これは最初からあまり手をかけていないのであちこちが腐って雨漏りがし始めました。
11年は限界のようでもう作り直さないといけません。

近いうちに取り外して工房に持ち帰り今のハードドジャーを型にして簡単にFRPハードドジャーを作ろうと考えています。

出来るだけ凹凸を取る作業の後4層から5層ガラスを積層して今と同じ形のハードドジャーを作ります。

窓の大きさは現在より少し大きめにして前方の窓は開放できる様にするつもりです。


もうほとんど交換を終了したのですが可動部分にステンレスを使うのは止めました。

鉄もステンレスも反復折り曲げには非常に弱いと言うことが解りました。
ステンレスワイヤーも可動部分に使用してはいけません。

一見動いていないように見えて角度を変えて力がかかったり緩んだりしている部分もステンレスは駄目です。


小さいことも大きいことも頭にチェックボックスの □ を書いてから箇条書きにしていきます。

何時でも10箇条や20箇条の整備リストは出来上がります。


やり終えたら □ にチェックを入れていきます。

そして又整備チェックリストの作り直しです。

際限なく整備をしているようにも思えますがだんだん整備の軽重が軽い方に変わっていると感じます。
今の整備リストの一番大きい項目はハードドジャーの作り替えでしょうか。


僕のヨット「花丸」への関わりは できるだけ良い材料を集め船体やマストを作り。

僕のヨット「花丸」に見合った部品を作ったり調達したりして取りつけ、

そうして出来上がった「花丸」に乗って航海をし 海で通用せず壊れた部分の整備をする。
乗ることもそうですが整備をすることも楽しんで居るという気持ちにだんだんなってきたように思います。

乗り手としてよりも作り手としての時間がだんだん長くなってきています。
そろそろ「花丸」の整備も終わらせて少し長期の航海に出たいなあと思います。

そうすればまたまた整備項目が増えるでしょう。

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