208 北海道の自作者-2
忘れない内に書いておこうと二日続けて海の広場を更新する事にした。
質問事項を箇条書きにして一般配置図などを一緒に送ってくれていたので質問事項に関しては昨日の「海の広場」207に書いたようにお答えした。
自作経験豊富な人なので僕が言ったことは専門用語の説明をする必要もなくすぐに理解してくれた。
次は昼から「花丸」に行って実際に疑問に思った点や僕がこうした方が良いよと言うことをお話しすることにした。
ひとつ言い忘れたことから書いておく事にする。
重量物のバッテリーが左舷水タンクの反対側に2個入る様になっているが、
バッテリーはエンジンの近くがよい。
エンジン・セルモーターを回転させる電線はセルモーターとバッテリーが近い方が細い線が使える。
電線重量もバカにならないくらい長くて太い線を使うのは問題だと思う。
水タンクの反対側左舷バースの下には重い物を(例えば工具など)収納するようにすればよい。
僕ならもう一つサイズの同じ水タンクを右舷にも取りつけるだろう。
それはどのようなヨットの使い方をするかによって本人が決める事だ。
コクピットからキャビンに入るアプローチ部分フレーム1スパン分のコクピットシートと同じ高さ部分が岡本さんの図面にはあった。
一度この出っ張り部分に立ってからキャビン階段に足をかけてキャビンに入っていくことになる。
これは問題だ。
毎回出入りの度にしっかり体をホールドできないような所で 横波を食らって大ヒールしたら落水の危険にさらされる。
高い所に立たないでひとまたぎでコンパニオンウェーからキャビンに体を入れられるように改善すべきだとお話しする。
せめて低い姿勢で入り口の内外に取りつけたハンドグリップを持った状態で入り口をクリヤーできるようにフレーム半分くらいの出っ張りにすべきだろう。
今から作る木の船だからその辺りは知っていれば自由に変更がきく。
この出っ張りの船尾側の角にメインシートトラベラーが付くがこれが又問題でレール自体がつま先に引っかかりつまずきの原因になる。
だいいちメインシートトラベラーを頻繁に調整してブーム引き込み角度を変えるのはレースの時くらいなものだろう。
レースをしない人にはトラベラーは不要だと思う。
それよりも安全第一・作りやすさ第一で行くべきだろう。
バラストに関して僕は普通のエンジン付きの漁船が入っていける小さい漁港にでも何所にでも入っていけるバラストのあまり深くないヨットの方が良いと思っている。
岡本さんの30フィートには3種類のバラストを選べるようになっていたが岡本さんはデッドウッドを挟んでバラストの重量位置を下げてより前後巾が狭くて今頃のレーサーのようなバラストを選んでいた。
どう考えてもデッドウッド部分に木の縦繊維を使う様な設計はおかしい。
前後方向は少し幅が広くなり水の摩擦抵抗は増すだろうが直進性に勝り吃水からの深さも1200ミリメートルと浅いバラストの方が良いですよとアドバイス。
そして、僕がお勧めしたバラスト取り付けはフランジが着いたバラストで取りつけボルトの数も多く楽に頑丈に取り付けが出来る。
全長ーーーー9メートル
水船長ーーー8.4メートル
巾ーーーーー2.86メートル
吃水ーーーー1.2メートル
排水量ーーー2.86トン
クルージングヨットとしては幅が狭くて重量も軽く追っ手では早そうだ。
バラストキール取り付けの船内側の様子は床板をはぐってしっかりと写真に収めていた。
バウハッチには市販品の良い物を買って取りつける様にお勧めした。
木造で作ると背が高くなりメンテナンスも大変でハードな走り方をすると水漏れも普通に起きる。
出来ればそんな所に無駄な労力を使わないで市販の良い物を買った方がよほど楽です。
ドックハウスコーミングの角を覆っているチークの擦れ止めや
帽子のひさしのように前に飛び出したドッグハウス前の部分などは作りにくい上に雨水を溜める原因となり船を傷めるので廃した方が良いと勧める。
昔の木造船のスタイルに思い入れがありどうしてもそうしたいというなら話しは別だが、
合理的に考えて不要な部分は省いていく方向でヨットを造らないと造る時にも維持管理をする時にも無駄な時間を消費するようになる。
図面にはエンジンの燃料給油口や清水取り入れ口などデッキにあるが、
デッキは往々にして海水で洗うような事がある。
出来るだけそんな走りをしないように心がけている僕でもそうだ。
特に燃料給油口は燃料タンクの直ぐ上のコクピット床に取りつける事を勧めた。
コクピットなら急な給油も予備タンクが安定して楽に出来るし海水が給油口を洗うような事もほとんどない。
船体トリブルプランキング外板接着が北海道の寒さでストップしている間に小物のラダーなどを作りたいと言うことで、
ラダー金具を発注すると言われたが金具がラダーを左右から挟み込むような物になっていない。
ラダー中央に差し込む板一枚の金具でこれにラダーの木を両側から挟み込んでボルトで縫い付けるような構造だ。
理由は挟み込みの金具だと金具がラダーから横にはみ出して水の抵抗になると言うことでしたが、
一枚の金属板を木で挟み込むようなラダーは賛成できないとお話しをする。
ドジャーも取りつけると言うことなので、
それは船を作る段階でしっかりした物を取りつけておいた方がよいでしょうと賛成する。
どうせドジャーを付けるならキャビン左右の端から端までありコクピットの最前部に座ってドッグハウスにぴったりくっついて体がすっぽりドジャーの下に隠れることが出来る大きさの物がよい。
自分がコクピットベンチに座った時の頭の高さに合わせて高さを決めると良い。
空気の密度は水の1/800なので多少ドジャーの大きさが大きいくらいは問題にならないだろう。
それよりも水中の抵抗を減らすためにより軽い船・船型の良い船・より抵抗の少ない部品取りつけ等の方に力を入れる方が得策だ。
花丸の蹴込み(かかとを膝の位置より後ろに下げて座れるベンチの凹み)が着いたコクピットの座りやすさや
船内のベンチにも蹴込みが着いて座りやすくなっているのを見せる。
ギャレーの下 足先が入る床からの縦板の凹み部分も普通の家のごく普通の台所では当たり前に人間工学に基づいて作られている。
船体の形状やセーリングのためのリグ以外は
自分の使いやすさを重点に自由に変えて良い物だというのを解ってもらえたと思う。
木造艇ではFRPの船とは違い脱型角度も関係なくどうにでも出来る。
しかも今から作る船だからその辺りを図面通りに作る必要は全くないのだ。
最後に
シングルハンドで乗るヨットには前後のクリートもさることながら必ずミッドシップにまともなクリートを用意するようにとお伝えした。(図面には無かった)
入港の時風上の舫を先に取ると言うことはよく言われることですが、
風は真正面からや真後ろから必ず吹いているものではありません。
入港したら船の真ん中に有るクリートから舫ロープを出しておき船が動かなくなったらとにかく舫ロープを最短にして舫 船を止めてしまうのです。
そうするとどちらから風が吹いていようが前にも後ろにも横にも船と桟橋の間は開かずおもむろに船首舫や船尾舫を取ることが出来ます。
その時は風上側から舫を取り始めます。
先ずはミッドシップから一番短く舫綱をがっちり固定がシングルハンドの鉄則です。
そしてミッドシップにクリートがあるとスプリングラインを取るのも楽です。
ドッグハウス上に取りつけるグラブレールの足は必ずドッグハウスのビーム上に来るようにグラブレールを作り ボルトでグラブレールとビームを縫い付ける事。
船内グラブレールは目の粗いコーチスクリュウーでデッキビームに縫い付けても良いこと。
船外でグラブレールが外れたら命取りだが、船内でなら打撲くらいで済むだろう。
等々細かい思い出せない話しが沢山出ました。
僕が紺屋の白袴で船内の塗をサボったばかりに天井内側にカビが生えた失敗談なども話しました。
今からもし作るとしたあらバラストを取りつける前の船内造作が終わった時点で船体をもう一度反転させてドッグハウス天井のフィレット付けや塗をする。
そうすれば上に向かっての作業は楽になり早くなり綺麗に出来るというアイデアなどもお話しした。
アマチュアビルダーは作る事も楽しまないといけませんが、
一度は作る楽しみで後は乗るのでしょうから乗ることも考えておかねばなりません。
進水させて自分の思う船になりさあ世界中何処へでも行けるぞという自信が持てるには進水後一生懸命シェークダウンをして3年くらいは必要でしょう。