209  ヨットの進化40年

僕は学校を卒業してから直ぐにヨットの世界に飛び込み既に42年が過ぎ去りました。

その間色々なヨットに乗りましたが(クルージングヨットが主です)随分何もかもが進歩しました。

最近二人の知り合いがドジャーを取りつけるというので相談に乗っている内にそれだけではないヨットは随分進化したのだなあと感じるところがあるので書きだしておこうと思い立ちました。


最初24歳で手に入れたヨット「鷗盟」は25フィートFRPのスループでした。
これが僕がヨットを始めたと言える最初の船です。

今の「花丸」と比べると大きさだけではない違いがあります。

それは「花丸」を浮かべて何年かして(多分10年くらい前)父を「花丸」に誘った時に彼が言った言葉で気がつきました。

「何にもする事がない船だなあ」という感想でした。

その前大昔に父が乗った事がある「鷗盟」や愛媛大学ヨット部の「勝山」などは色々とやらないといけない仕事がいっぱい有ったと感じたようです。

舵取りやチャートワークや煩雑なセールチェンジ等だと思います。


先ずは舵取りでしょう。

あの頃はオートパイロットも無く誰かが舵を握って常にセールに風をはらませて走っていました。

舵取りの事をスキッパーと言います。
小型船では普通は船長です。

でも本当は舵取りが上手な人に船長としての腕があるかどうかは別問題なのです。

舵取りが一番上手なのは現在ほとんどの船に取りつけられているオートパイロットです。

オートパイロットは文句も言わず 酒も飲まず ご飯も食べず ほんの少しの電力で何時間でも何日でも同じコンパスコースを保ってくれます。
どんなに舵を取るのが上手な人でもオートパイロットには勝てません。(もちろん保守点検は必要です)

これは大きな進化です。
船長は本来の船長としてのナビゲーションや進路指示やワッチなどを舵を手放してゆったり出来る様になったのです。


次は色々ある中で僕ならドジャー取りつけを上げたいと思います。

今ではドジャーのないヨットなど乗れる物かと公言しているくらいです。(もちろんクルージングヨットの場合です)

昔はドジャーなど無かったので荒れてくると波飛沫がコクピットまで飛んできて頭からずぶ濡れというのがあたり前でした。
顔中海水が乾いて白くなり 眉毛から白い塩が落ちてくるような状態でも平気でヨットに乗っていました。

南太平洋では隠れるところがないので真っ黒に日焼けし体中塩だらけでその塩を夕方には潮水で洗い流す様な航海をしていました。

若かったのですね。

でもそんな限界状態は自慢にはなりません。

体力を消耗して天候の先読みやナビゲーションやありとあらゆるヨットの上の安全に関わる大切な仕事に影響を及ぼすのです。


その次はジブファーラーかな?

ヨットには前方にジブセールと言う帆を張ります。
それを昔は風に合わせていちいち船首へ行って違う面積の帆と入れ替えていたのです。

今ではほとんどのヨットが採用しているファーリングジブというジブセールを巻き取るシステムがあります。

アッという間に帆を巻き取って強風の縮帆が出来る様になりました。

もちろんセールを出すのもウンコラサと重いセールバックをかついで船首へ行きタックを止めてハンクスを何個もフォアーステーに止めつけハリヤードをセットしてセールを引き上げるという手間が不要になりました。
ファーラーが無い時は、そんなことを風の強度に合わせてしょっちゅうやっていたように思います。

帆の展開もジブシートのひと引きで済みます。


忘れてはいけません。

一番の進歩は何と言っても電子海図とGPSによるナビゲーションシステムの発達です。
本船のために進化した物が安い値段でヨットにも使えるようになりました。

昔の天測はほんの一握りのヨット乗りにしかできない神業のような技術でしたが、
今では無用の長物と化しました。

猫も杓子もといいますが本当にパソコンでもタブレットでもスマートフォンでも何でもカーナビと同じ様に誰でもが電子機器をヨットのナビゲーションに使えるようになりました。

その事はここ40年のヨット進化(というか船のナビゲーション)の最たるものではないかと思います。


アンカーだってそうです。
中村技研工業のアンカーのように重量やチェーンの長さなどではなく本当に海底の砂や土に食い込んで船を駐めるアンカーが出て来ました。

軽くてもテンションがかかるほどに土の中に食い込んで行くので周りの土も船をつなぎ止める重りの役目を果たします。

何かの理由で一度アンカーが引けても再度食い込み直します。
これが本物のアンカーです。

昔の太平洋一周航海では30キロもある唐人アンカーと全チェーンで「鷗盟」をアカプルコ湾を襲って沢山のヨットが陸に打ち上げられた大嵐から守りました。

あの昔 中村技研工業のバルカンアンカーが有ったなら当然重量が軽くて船をつなぎとめることができる本物のアンカーを選んだでしょう。

その昔こんなアンカーはありませんでした。


アンカーをあげるウインドラスも「花丸」は電動にしました。
腰痛持ちの僕もあげる事を気にしないでどんどんアンカーを打つことができます。

トイレも随分進化しました昔のトイレのように壊れやすくはありません。

「花丸」のような小さな船にも取りつける事が出来るレーダーも出て来ました。
これなども考えられないような進化です。

エンジンも小型になり髙馬力になっています。


後はヨットに乗る人間だけが進化しません。

古いヨット乗りはだんだん歳をとりヨットをやろうなどと言う新人がほとんど現れません。

僕も含めヨットに乗っている人は歳のせいか石頭が多いと感じる今日この頃です。


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