210  オズモシス

FRPヨットの癌と言われるオズモシスについてお話しします。

FRPの船は普通 型(モールド)と呼ばれるメス型にゲルコートという色のついた質の良い樹脂を吹き付けておいてその上からガラス繊維と樹脂を空気を抜きながら何層も積層して作ります。

FRPヨットのピカッと光った船体の色はモールドから脱型した時のゲルコートの色なのです。

以前はハンドレイアップといってガラスマットを置いては羊毛ローラーで樹脂を染みこませその中に溜まった空気を金ローラーを転がして追い出すというやり方でした。
最近ではバック成型というやり方でバックで覆って負圧コンプレッサーで空気を引き抜くと言うやり方も普通にやり始めました。


オズモシスが出来る原因になるのが最初にモールドに吹き付けるゲルコートです。

ゲルコートはほんの0.5ミリほどの厚みなのですが、
その0.5ミリ厚味の内 ピカピカのモールド表面に接する部分1/50くらいの厚味が密度が非常に高く防水性を受け持つ部分となるのです。

ところがその薄い薄い防水性の高い皮膜部分に目に見えない浸透膜の働きをする膜が出来ることがあります。

小さい目に見えない穴だけなら海水や真水が出入りするだけで済みますが、
その穴に薄い膜があり浸透膜の役目を果たすのですから困るのです。


浸透膜はゲルコート内部の完全硬化していない高濃度の液体がより濃度の薄い海水や真水をどんどんゲルコート内部に向かって引き込みます。
それは一方通行で引き込むばかりで出て行くことはありません。

早い船では進水して1年くらいでオズモシスが発生し始めます。
今までで一番酷いもので3センチ角に1個位の割合でもの凄い量のオズモシスが新艇に発生したのを見たことがあります。

いずれにしろ長時間海上で保管したFRPヨットは要注意です。

20年くらい経つとオズモシスで出来たブリスター(脹らみ)はゲルコートを通り越してガラスマットの中まで浸透し 直径7〜8センチ深さはガラス繊維3層以上にまで達します。

オズモシスが出来ると船の重量は増し、FRPの強度は著しく落ちます。


原因は色々言われますがゲルコート吹きつけ時の温度や湿度や施工方法に関係しているようです。
ゲルコートが硬化して後のガラスと樹脂の積層にも関係あるようです。

ハッキリこれが原因だと言うことが出来ません。

同じ船でも部分的にオズモシスが大量発生したり、全く無かったりすることがあるので原因が特定できません。


修理方法は決まっています。

とにかくブリスターを削り取り(とんでもない悪臭を放つ液体が飛び散りますのでご用心)完全に液体を洗い流して乾かすことから始めます。

毎日水洗いしながら1ヶ月間 洗っては乾かすと言うことを繰り返しなさいとオズモシス修理の指示書にはあります(実際にそうしたこともやりました)。

でもそこまでやらなくても朝夕一回水洗いして乾かすと言うのを1週間も繰り返せば液体の濃度も薄まりオズモシスの為に削り取った凹みはそうとう乾燥するはずです。
特に冬の乾燥時期は乾燥が進みます。

後は水線下でも使えるエポキシパテで凹みを埋めて硬化したら板ずりで平面を出し、
平面が出たらインタープロテクトという防水性のある二液のエポキシを硬化てからサンディングしながら3回塗り重ねます。

なぜ3回もインタープロテクトを塗らないといけないかというと一回一回の塗には必ず目に見えないピンホールがあります。
削っては塗重ねると言うことによってそのピンホールが重ならないようにずらしていくのです。
3回以上塗重ねると防水エポキシの膜が完成します。

その後普通に海草やフジツボが付かないように船底塗料を塗ります。


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