213  舵  (2016/07/09)

長く海の広場の記事を書くことを休んでしまいましたが又書き始めようと思います。

 

ヨットの事に関しては日本最古で最大の雑誌「舵」があります。

高校生の時に友人が買っていたのを読み始め若い頃は夢中になった雑誌です。

本棚が変形するほどの重さになる舵誌を持って居ましたが、
今は買っていないし 読んでいません。

ヨットの世界では舵というと舵誌のことを思い浮かべる人が多いでしょう。

今回の海の広場の題名「舵」は雑誌についてではなく実際に船を操る舵について書きたいと思います。


船では普通 舵は船尾側にあります。

丁度 車で言うフォークリフトのように後輪のタイヤが向きを変えるようになっています。

ただ普通に前進する時はフォークリフト感覚で船首の左右への動きを見れば舵をどちらに切れば今からどの方向に船首が動くというのは直ぐに覚えられます。

その感覚になれると今度は後進の時なかなか頭を切り替える事が出来ません。

後ろに向かって進んでいる時は進みたい方向に舵の後端を向けるのです。
スピードが速いとしっかりティラー(舵棒)を持っておかないと舵板に当たる水圧で人の力では抑えきれないくらいの力がかかることもあります。

しかも前進も後進も船が動いていないといくら舵を切っても全く思う方向に船を向けることができません。


困ったことに車と違い海面は常に動いています。

だから船にはフットブレーキもサイドブレーキもないのです。
動いていない海底にアンカーを降ろし、そのアンカーからのロープ(アンカーライン)で止める事しかできません。

もしくは、動いていない大地に作られた岸壁やそれらに止められたポンツーン(浮き桟橋)に舫ロープで縛ると船は動かなくなります。


そんな動いている水に浮かぶ船は車よりずっと複雑な動きをします。

槍付けで港に入っている船がエンジン微速後進であとすざりをして舵を中央に保って居ると、
前進右回転のプロペラを取りつけた船は(後進の時は左回転)船尾を左に振りながら後進します。

真っ直ぐ後進したければ舵角を右へ少し切っておく必要があるのです。


自分の船が前進にクラッチを入れた時・後進にクラッチを入れた時どちらに船尾を振るか風が無い平水の時に試して知っておく必要があります。

エンジンで推進力を得るプロペラを回すと前進では船尾に向かって水流ができ、
後進ではプロペラから船首に向かって水流ができます。

それらの水流で船が動き始めて初めて舵が効くのです。
しかも、船が動き始めると同時に船尾をどちらかに振りながら動き始めます。

前進している時や後進している時に、
前進・後進をエンジンクラッチで切り替えても船の動きが一度止まり進行方向を変える(前進から後進に・後進から前進に)までは舵は最初のままにしておく必要があります。
クラッチを切り替え船の進行がハッキリと止まった時点で行きたい方向に大きく舵を切れば船首は回頭して新しい方向を目指すことができます。


もう一つ瀬戸内海のような潮の流れが速い海面では船首を行きたい方向に向けていたのでは最短距離を走る事は出来ません。

全体が動いている海面に浮かんでいる船はその潮の流れる方向を加味した舵角度で進みます。
行きたい方向に船首が向いていると言う事はほとんどありません。

電子海図の上に自分の位置と実際に進んでいる対地方向と対地速度が表示されて初めて目的地への最短コース直線上を走る事が出来る様になりました。

場所と時間によって刻々と変化する海流や風の影響など全てを織り込んだ舵角度を決める事が出来る様になりました。


船にとって舵は推進機のエンジンやセールと同じくらい大事な装置です。

是非自分の船を自由に操るために対水速度と舵の関係を体感して覚えておきましょう。

 

波舵(なみかじ)と言う高度なテクニックもあります。

大時化の追っ手で走っている時 船が浮かんでいる場所に船より速い波が後ろから来たら その波の早さで船は実際の水の流れでは後進していることになります。
今までと逆の舵を切って船の進行方向を保ちます。

波舵を切るような機会は船の一生の内そう何度もあるとは思えませんが、
何時も漫然と舵をとっていないでしっかり頭で考え身に付けて初めて出来る事なのです。

両手両足がガタガタ震えて咽がカラカラに乾いても 確信を持って波舵が切れるように日頃から船の動きと舵さばきを訓練しておきましょう。


 

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