222  チリ Valdivia (2018/10/10)

2018年09月22日現地時間(15:45)チリのValdivia Yacht Clubに入港した。

チリの国旗をメインマスト右のフラッグラインに揚げているのが「花丸」です。

エクアドルからの道程は厳しかった。

ずっと左開きの登りが続きガラパゴスよりも西に出ないと南下することが出来なかった。
最初は大陸沿いに直線的に南下しようとも考えたが、エクアドルでずっと見ていた天気予報からそれは無理なことが解った。

メキシコのLa Pazからカナダを目指したクリスチャンさんも同じ様にずいぶん沖に出てからでないとカナダは目指せない。

だったら仕方がない僕たちも真向かいから来る潮流と弱い風を避けて沖出しする事にした。
陸に近い所(近いと言っても100マイルも沖に船外機船3人乗りくらいで出ているのです)に漁に出ている航海灯を点けないエクアドルの小さい漁船も非常に怖かった。
そんな小さい漁船にエクアドル入港の時何艇も会い怖い思いをした。

ところが沖も楽ではなかった毎日毎日登りの強風が続きデッキに上がる飛沫がまるで川のようにデッキを流れた。
青波ではなく飛沫が流れるほどデッキに上がってくる。
チェーンプレートは水没しっぱなしで念入りにした防水もマストを支えるワイヤーに強大な力が常にかかり防水効果を失った。
出発の度に防水をやり直すが遂に今回で防水を諦めチリに着いたらチェーンプレートの位置を船外に出すことを決断した。


長期間の登りも終わりやっと追っ手の風に転じたと思ったら超微風の後は強風続きだ。

エクアドルで修理してもらったクルージング・ジブセールを又もや自分の手では修理出来ないほどバラバラに引き裂いてしまった。
その後もさらに強風は続きメインセールの2ポイントリーフが何日も続く事になった。

風力は最高でビュフォート風力階級7まで上がった。(手で持って計る風速計を持っていますが追っ手の風では有力は弱めに出ますがそれでも7でした)
メインセール2ポイントリーフのセールだけでも面積が大きすぎてウインドベーンがコントロールし切れないでワイルドジャイブや横倒し寸前の切り上がりとなる。

何とか走り続け、39日も費やしてやっとValdiviaヨットクラブがある河口にたどり着く。

いよいよ川に入るぞと言う時にいきなり後方 太平洋側から真っ黒な雲が押し寄せ雨と飛沫で何も見えなくなった。
測深計とOpen CPN上のGPS位置情報を頼りに2ポイントリーフメインだけでそろそろと進む。
何かあれば直ぐに逃げられるようにエンジンも始動しておいた。

ハッと気がつくと目の前で白波が崩れ水深が随分浅くなっている。
その向こうには陸に建つ家が沢山見えた。
心臓がドキドキ早くなり咽がからからに渇いた。

それでもデジタルチャートとGPS位置情報を信じてそろそろと河口を目指していた時いきなりチャートが切り替わった。
(僕は日本で何カ所か経験していたので慌てなかったが 古い紙のチャートをそのまま電子チャートに替えている所があり、その部分はGPSの位置がずれて表示される。日本では小笠原と宮崎県の一部で経験した)
 測地系が違う と言うようです。
各国ごとに作っていた昔の紙のチャートは最新の測量技術で地球的に正確な位置を出すとそれぞれ少しずつずれていたようです。

ここではおよそ600メートルくらいのずれがある。
河口に入ってからバルディビアヨットクラブまでの予定コースを 外洋で引いて居たのだが、実際に走っているのは電子チャート上では陸上になるGPS表示だ。

それでもゆっくりゆっくり予定コースと平行線になる様に頭の中で電子チャート上にコースを描きながら川を遡る。

和江さんが測深計を数字が変わるごとに数字を声に出して読んでくれたのは非常に助かった。

全く周りの景色など楽しむ余裕もなく河口からずっと続く緊張で咽が渇いたままValdivia Yacht Blobの前に到着した。

不思議なことに何度も方向を変えて川を遡ったのにずっと追っ手でメインセール2ポイントリーフのまま追っ手の風をはらみ続けたのでした。


Valdivia Yacht Clubの前に到着してさあ入港しようにもどこに入って良いか解りません。
ゲストバースも見当たりません。

どうした物だろうと流れのある川の中でマリーナ入り口前をぐるぐる回っている時一番外側に泊まっているヨットの中に人を発見、
どこに駐めたら良いですかと聞くとハーバーマスターに聞きに行ってくれました。

ところがハーバーマスターは不在だという返事です。

それで仕方がなく別の船に横付けしようと言うことになりその人(フィンランドから来た船のキャプテン アイスキーさん)が手伝ってくれました。

横付けしてしばらくするとマリーナの従業員の人が二人来て中に入れてここに入れと言われた。
バースは船首に狭い間隔のパイルが立つとても入れそうにない場所でした。

そんな狭苦しい所にバックでパイルの間を抜けて船を入れるのは無理だというとその二人が俺たちも手伝うからと花丸に乗ってくれたのです。
入り口も狭くて川の流れもあり3回も入港をやり直し4回目にやっと狭い入り口を抜けマリーナの狭い通路でバックにクラッチを入れると、花丸は直ぐに川の流れであらぬ方向にお尻を振ってしまいます。

それを僕とマリーナの従業員2人と和江さんの4人がかりでボートフックを使い押したり引いたりしてやっとの思いで所定の位置に入れました。

その日一番に来たのは海軍の二人でした。

全く英語が出来なくて困っていると花丸にRaulさんと言う人が名刺を持って現れ通訳をしますよと入ってきてくれました。
アッというまに手続きは終わり(あらかじめ海軍に報告していたのが良かったようです)必要書類は埋まりました。

次に夜遅く来たのは自分から第二の警察(PDI )から来たと名乗ったインスパイヤー エリオットという若者でした。
彼は英語が堪能な男前の若者でした。
電話番号を教えてくれて何かあれば僕の名前を言え他の人は英語がわからないからと電話番号をくれました。

翌日の朝来たのはこれも目鼻立ちの整った若者で検疫官でした。

クルージングヨットの情報交換の場で蜂蜜は食べかけたビン一つはOKだが後は没収だとか、残りの果物や野菜は没収だとか色々書かれていたようです。
それで僕たちは大量に残りそうなニンニクを全部茹でて食べたり、残りそうなジャガイモを無理して料理したり、色々やって残ったのは数個のギャガ芋とタマネギ2個だけでした。
検査官はこれらは陸に上げないで食べるのでしょうと言ってくれ何も没収されることもなく調べられることもありませんでした。

その代わりデッキに出てセールカバーを外して内側を見たりライフラフトのカバーを見てみたり色々デッキに乗っている物を調べて居ました。
思っても見なかったことです。

最後にお別れはアディオス・チャオと言ってお別れの握手をしました。
和江さんにはお別れの時女性はほっぺに一回だけキスをするんですよとキスを要求、和江さんは照れながら彼のほっぺにキスをしました。

今思い出しても好青年でした。


 

さていよいよチリ(Valdivia)と他の国や地方の違いで僕がおやっと思った事を書いておくことにする。

① チリでは海軍にも200海里以内に入ったら連絡を入れる必要があります。

カスタムには入港前48時間から24時間の間に連絡を入れる決まりで入れない船は罰金を取られるそうです。
僕たちは花丸のイリジュウムメールで石川さんと宮沢さんに教えて頂いたメールアドレスに英語でコンタクトを取りました。

両方とも親切できちんと返事をくれました。
海軍の方は朝夕08:00と20:00に連絡を入れるようにと言うので面倒くさいから花丸位置情報を見るアドレスを送っておきました。

② チリには沢山のヨットクラブがある。
と言う事はマリーナもエクアドルなどよりもずっと沢山ある。

ところが首都Santiagoの近くにあるパルパライソヨットクラブは初日は無料だが翌日から一日220アメリカドルだという。
1ヶ月割引きはないそうだ。
そんな高いマリーナに入る船があるのだろうか?

どうも南下するほど設備は良くなり係船料は安くなるみたいだ。
チリの北の方には入り組んだ良い港はなく 南に行くにつれて外洋のうねりが入って来にくい入り組んだ地形だ。

③ ここValdivia Yacht Clubの従業員や守衛さんやハーバーマスターみんな親切で毎日おはようございます、ご機嫌いかがですかと声をかけてくれる。

仕事をしている人は2人で一人はペンキ屋さんもう一人(Guiddermo Avrnfsnoイエルモ アヴェンダノさん)が木工から部品取付から何でもこなす仕事が出来る人だ。
昨日話を聞いて見るとどうもエンジンメカニックが本職のようだ。
僕も同じ様に何でもこなす仕事をしていたので、仕事の様子を見ていると直ぐにこの人は出来ると解る。

④ 街の人はエクアドルやメキシコの人達よりも随分日本人好みに物静かで感じがよい。
ジロジロ見たりしないし、こちらがオオラ!と声をかけるとちゃんとこちらを意識していてオオラ!と返してくる。

メキシコに沢山居たお尻だけ異常にでっかい女性も居ない。

身長はエクアドルの人よりずっと高くて僕よりも背の高い女性も沢山見かけた。
ドイツ系の移民が何代か混血して目鼻立ちのスッキリした美人・男前が多い。

⑤ 車はメキシコやエクアドルよりもずっと綺麗な車が走っています。
日本の様に車検がうるさいのかどうかは解りませんが綺麗な車が多いです。

車種は半分くらいが日本車かな?

スズキ自動車が特別力を入れているようで、車もバイクも船外機(チリではヤマハよりスズキが多い)もスズキが多いです。
バイクなどは日本では見かけないスズキの1000ccを超える大型バイクを見かけます。
ホンダのバイクは小型で少数しか見たことがありません。

⑥ タクシーは日本と同じ様に屋根の上にタクシーだと直ぐに解る横に長い看板を乗せています。
そして、ナンバーが普通の白色乗用車とは違いオレンジ色で、車体は黒色がほとんどです。

⑦ お金はチリのペソです。
1000ペソが160円  10000ペソが1600円で  今まで見た最高の札は20000ペソ(3200円)でした。
その他に札は1000ペソと2000ペソと5000ペソがあります。

小さいお金は鋼貨で500・100・50・10ペソがあります。

あまりに単位が大きいので圧倒されますが物価は日本の半額くらいです。

⑧ 道路は日本と変わらないくらいスムーズです。

放し飼いの犬が居るので犬の糞には気をつけないといけません。

⑨ 学校は近くに大学があります。
高校や小学校も見ましたが門も開けっ放しでエクアドルやメキシコほど閉鎖的ではありません。

大学の近くにはスプレーでの落書きやまともかなと思える絵を描いた壁もあります。

⑩ スーパーマーケットはレジ袋を置いていません。

それぞれの買い物客が袋を持って来ています。
僕たちも何時もリュックを背負い買い物袋を下げて買い物に行きます。

⑪ ドイツ人が作った街です。
立ち小便は流石に見たことがありません。

たばこは安いのか吸っている人が多く若い女性も歩きたばこをしているのを見かけます。
路上へのポイ捨てたばこも多いです。

⑫ チリValdiviaは静かな田舎町という感じです。

メキシコやエクアドルほど騒音を立てる車は走っていないし、人の話し声も耳障りの良い静かな話し方です。

⑬ トイレ・シャワーは今までのマリーナで一番綺麗です。

さっぱりしてるはずです 毎日掃除当番が掃除をして掃除をしたよと表にチェックを書き入れています。

⑭ チリの人は僕たちに比べ随分背が高いです。

まあ今の日本人の若者も僕たちよりは随分背が高くなっては居ます。

⑮ チリでは一度結婚すると別れることが出来ないと チリ出身のソニア(ニューカレドニア在住)さんに聞いた事があります。
だからフランス人のロランさんとソニアさんは名字が違います。

こちらで入港の時からお世話になった Raul(ラウル)さんに聞いたのですが、今ではそんな事は無いそうです。
ここ10年以内だと言いますが自由に結婚も離婚も出来る様になったそうです。

⑯ チリの人の名前はファーストネームとファミリーネームで日本人と同じ様に名前と名字で出来て居ます 。

チェーンプレートを注文したGuillermo Avendano(イエルモ アベンダノ)さんの息子(3男)が来ていて英語で名前のことを教えてくれました。
自分の事をクアンパブロ アベンダノだと紹介されました。

⑰ ここValdiviaではゴミの分別をします。

日本ほど細かくはありませんがビン・缶・ビニール・生ゴミくらいは分けて出します。

検疫官にゴミはマリーナの指示に従って捨ててと言われていました。

僕たちは最初ゴミはみんなここに捨てろと言われて工場の横の大きなポリ缶に捨てていたのですがどうもマリーナの人が分別してくれていた様です。
最近は自分たちで分別してそれぞれの捨て場に捨てています。

⑱ 軽油と灯油を買いましたが、日本と値段は変わらないみたいです。

他の物が安くて日本の半額くらいなので高いと感じます。
ここチリの人にとっては大変高価な燃料ではないかと思えます。

⑲ バスは大概後ろにエンジンが付いているようで 後ろの排気ガスを屋根より高いところまで立ち上げて排気しています。
日本では見ない光景です。

⑳ 市場は川沿いに有ります。

魚市場と果物や野菜市場が細長く向き合っています。
もう何度も行きましたが 品数が少なく肉類が無くて スーパーマーケットも必要だなと思います。


Valdiviaには日本で良く見た植物がいっぱいあります。

僕は名前を知らないので和江さんに気がついただけあげてもらいました。

藤・しゅうめい菊・ツツジ・カエデ・モクレン・イチハツ・バラ・ツバキ・クローバー・ボケ・シャクナゲ・桜・ネコヤナギ・サツキ・イタドリ・タンポポ
キンセンカ・アジサイ・カラー・ビワ・オオバコ・竹・キンレンカ・ピラカンサスなどだそうです。
その他見覚えがあっても名前が出てこない植物もあるそうです。

植物の事をよく知らない僕でさえあれ!これは日本にあると思う物を沢山見ました。
僕にも親しめる家の庭や道の草花です。

人も親切で 犬たちも人なつっこく 植物も見慣れた物ばかりで非常に親しみの持てるチリValdiviaです。



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