233 フランスMidi運河 1 (2019/09/06)

 この世界一周航海の一大イベントとしてフランスの運河航行を考えていました。

花丸の設計段階から横山さんにお願いしてフランスの運河を行くからできるだけ浅いバラストの船をと注文しました。
設計図を注文した38年前からフランスの運河航は決まっていたのです。

バラストが浅くなったおかげで瀬戸内海でも随分楽な思いをしました。

普通の漁船しか入らないような小さい港でも簡単に入る事が出来ました。
(32フィートのヨットだと普通吃水は2メートル近くになります)

花丸の吃水は固定キールで1.3メートルしかないので皆さん本当かと驚きます。

その代わりキールは重い鉛です。
深さを削った分前後に普通よりも長いキールです。

長距離航海では直進性が求められるので前後に長いキールは歓迎でした


 さてMidi運河に入るに当たり沢山の橋の下をくぐるためにマストを倒さないといけません。

何所へ行って何をどうすればよいのか全く解らない状態のままスペインへ着きました。

フランスのヨット事情に滅法強いファーストマリンの関口社長が動いてくれました。

スペインを出る前にはフランスのPort Gruissan へ行ってHerve(エルベ)マリンさんという業者にお世話になるようにと言う指示をもらいました。

大正解で Midi運河の入り口には近いし、この時期非常に高いと言われるフランスのマリーナにしてはそんなに高いとは思いませんでした。

マストが2本有るので2本分の吊り上げ料金が必要だというのはまあ納得しましたが、
最初からマリーナの人は花丸を見て2本マストだというのを知っていたのだから2本分請求してくれたらもう一度遠い事務所へ行く手間や時間が省けたのにと悔やまれました。

マリーナの門型クレーンに付いているジブブームで花丸のマストはすんなりと地上のマスト運搬専用台2組の上に横たわりました。

花丸のマストとライフラフトを一ヶ月預かってくれるように手配してくれたのはHerveマリンさんでした。


一晩マリーナの作業場横の桟橋に停泊しました。

シャワーとトイレのキーをパスポートと交換にマリーナ事務所の女性が貸してくれて翌日返してくれたらよいと言ってくれました。

翌日には朝一番に起きてマリーナ事務所が開くと同時にシャワートイレのキーを返し、
燃料を満タンにしてもらってHerveマリンさんに教わった通り少し海岸に沿って1時間ほど南下した後いよいよMidi運河の入り口に入りました

入り口の両側には小さい漁船やモーターボートが駐まっており丁度横浜元町当たりの風景に似ていました。

ルンルン気分で勇んで川を遡りました。

チャートはナビオニクスでフランス部分を買った物で運河も詳しく載っています。

30分も進まない所で90度右に曲がっている場所があるのですがその手前と後に何重かに橋が架かり右に曲がる水路も1本ではないのです。
アレッと思っているまに本来の入り口を通り越し次の角に来てズブズブッとヘドロにバラストを捕まれて止まってしまいました。

スピードが遅かったのでバックにプロペラを回すと簡単に抜け出すことが出来ました。


そして、今度は間違いなくMidi運河だと言う方に入ったのですがここでも非常に浅くなっていてバラストが底に突き刺さりました。

釣り人が居たのでこれを真っ直ぐ行くとMidi運河ですかと聞いたのですが、英語は全く解らないようでした。

仕方無くエンジンを吹かして川の中央をそろそろと進んで行きました。

あまりにも川幅が狭く岸ものっぺらぼうで運河という物を知らない僕達は本当にこれが運河かなあとおそるおそる進みました。

しばらく行くと川幅も少し広くなりまあチャートでもこの川に間違いなさそうだと言う事でどんどん進みました。

真ん中を行かないと川底に沈んでいる小さい木がスケグやラダーに当たるので気が気ではありません。

プロペラが起こす水流が底のヘドロを巻き上げながら走ると言うような状態です。

正面から船が来たらどうしようと思っていましたがその日は船とすれ違うこともありませんでした。


適当に走った所で初めての水門です。

最初の2つの水門は自分たちで操作するようになっていて、
一人が降りて水門先の船溜まり横にあるスイッチを押して水門を開いて船溜まりに船を入れます。

スイッチは小学生でも解る様にオレンジのスイッチに行きたい方向の矢印が付いています。

登りたいので登りの方向の矢印が付いたオレンジ色のスイッチを押し船溜まりの水位と川下の水位が同じになりゲートが開くのを待ちました。

花丸が開いたゲートから船溜まりの中に入って岸に舫を取る頃にはオートマチックで今通ってきたゲートが閉まります。

ゲートも閉まり舫終わったら別の青い色のボタンを押すと上の水門左右の扉に2つずつ付いている水を入れる扉がモーターで持ち上げられ川上の水を船溜まりの中に注水です。

その間 船溜まりの舫ビットにくるっと回したロープを引いて船が岸に当たらないように船の方で調整します。
手でそのままロープを引くのではなくクリートなどに引っかけて引いていると結構な力がかかっても大丈夫です。

上がり下がりの矢印があるオレンジボタン二個と船溜まりを満水にする青色のボタン以外に緊急停止のそれらよりずっと大きい赤いボタンが付いています。

そして何かあれば家の玄関に付いている様なマイクに向かってゲート管理者と喋ることが出来る様になって居ます。

ここではフランス語だけでなく英語を話せる人が出て来ます。

そして何があっても10分くらいでは人が来てくれるシステムです。

僕も一度だけオートマチックのはずのゲートが開かないので人を呼んだことがあります。

直ぐに車で若い女の子が現れ古いゲート管理の建物の中に入ったかと思うとゲートを開けてくれました。


今7日間かかって90以上の水門を超えてToulousse と言う町にある小さいマリーナに花丸を駐めています。

街中で註艇禁止の看板が多くて駐める所が見つからなかったからです。
もっと時間があれば探せたのでしょうが 疲れているしたまにはまともにシャワーも浴びたいし買い物もしたいと言う気分でした。

どこに駐めても良い様な物ですが花丸のバラストは川の中央当たりでなく岸によるとつかえてしまうのです。

だからでしょう運河を行くヨットはほとんど見かけないし見かけても船外機を付けた小さいヨットがマストを屋根に乗せて走っている物ばかりです。
リフティングキールだと行けそうにも思えるのですがそれでも花丸よりも大きいヨットは見かけませんでした。

 

以降 続きを書くことにします


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