234 フランスMidi運河 2 (2019/09/07)

 僕がフランスの運河をヨットで行こうと思った40年近く前にはきっとヨットも沢山運河に入っていたはずです。

ところが今では小さい船外機付きのヨットが少しだけです。
10艇くらいは見たと思いますが15艇以下でしょう。(しかも、放置艇が多かった)

ナローボートという幅が狭くて30メートルくらいの長さがある家族が生活しているような船もそんなに沢山ではなくなっています。
花丸が走った所全部でで100艇くらいは居たでしょうが放置艇のようになったのや、売りに出している船も多かった。

中には綺麗にして昔ながらのサイドボードもピカピカにニス塗りして船中に鉢植えを置き植物でいっぱいというような船もまれには見ました。

元々運河専用の貨物運搬船を住居にした船が多いです。

そんなナローボート専門の修理再生ドッグもありました。


 一番幅をきかせているのはレンタルボートです。

ほとんどが同じ形ですが10種類くらいの艇種があり、大きさも30フィートから50フィートくらいまであります。

操船が出来ない人用に小さい船でもバウスラスターが付いていて、大きくなるとスターンスラスターが付いた物も有りました。

 そして、どのレンタルボートも船全体に何重もの防舷材を 取りつけてあります。
日本では漁船などのシアーに取りつけるツルツル滑るプラスチックの角材ですが色は黒色です。

おまけにこれでもかと言うくらい沢山のフェンダーを船全体を取り巻くようにぶら下げています。

水門にどんどん船をぶつけながら入って、あちこちにぶつけながら出て行きます。
レンタルボートだし防舷材は付いているし、おそらく保険も掛けてあるのでしょう、やりたい放題の無謀操船です。


 フランスの夏休みは7月8月だそうです。

働き手も会社も年に1ヶ月のバケーションを強制的に取らされるのだそうです。

バケーションを1ヶ月従業員に取らさない会社は罰則を受ける、取らない従業員も罰則を受けると言う法律を作り長く運用したので夏休み1ヶ月が定着したと聞きました。

良い様な悪いようなバケーションです。
日本の様に仕事が生き甲斐のサラリーマンから仕事を1ヶ月も取り上げたら気が狂う人も出てくるかも知れません。

 子供が居る人は子供達の夏休みに合わせて7月から8月の間に長期休暇を取り、
子供が居ない人は9月に長期休暇を取るのが普通だそうです。

 と言う事でMidi運河のレンタルボートも8月が終わったというように姿を消しました。

レンタルボート専用の船着き場に入り多くのボートが大掃除とメンテナンスを受けています。
掃除屋さんは大忙しで大きな掃除機を下げて次々に船を掃除して回って居ます。

今走っているレンタルボートには大人しか乗っていません。
それも子供が居ないか子供達が独立した大人なので少々年上で落ち着いています。

子供が居ないと言う事は何と静かな事なのでしょう。

でも少々うるさくても子供は必要だなと感じます。


 ほとんどレンタルボートが居なくなったMidi運河をこれから地中海に向けて下っていきます。

下るというのはここToulouseの一つか二つ手前くらいの水門がいちばん高い場所にある水門だからです。

それを過ぎると地中海に向かってずっと川を下る為の水門くぐりになります。

川上から水門に入り、川上のくぐり抜けた水門を閉じ、船溜まりの水を抜いて川下の水面と一致したら川下の水門を開き運河に出て行きます。

それを90回近く繰り返したら地中海に出られるのです。

来るときは1週間くらいでした。
あまりに忙しくて周りの景色を楽しむ暇はなかった。

 今度の下りはゆっくりと周りの景色を見ながら下っていこうと思っています。

せっかく来たのですからToulouseからCarcassonの景色がよいと言われる所はゆっくりと走ります。


 全体的に見て今考えると自分のヨットでマストを倒して預かってもらってまで入って来るようなMidi運河ではありませんでした。

船体は水門の船溜まりで傷だらけになりました。

バラストは水門のゲート底の石にぶつけました。

おまけに運河で駐めて寝ようと思ってもバラストがあるヨットは岸辺が浅くて岸に寄せられないので無理をして惰性で岸に突っ込みます。
出すときが大変でバックするとラダーやスケグに木の小枝や根っこがガタンガタンと当たります。

スケグやラダーが壊れてしまうのではないかというような当たり方です。
その度に泣きたくなるほど情けなくなりました。

運河中央を走っていても沈木がラダーやスケグに衝撃を与えることは一日に20回以上有りました。
バラストは重いからそんな小さい沈木など物ともしませんし当たったことさえ解らないのですが、その衝撃で浮き上がった小さい木がスケグとラダーにぶつかるのです。

 結論は自分のヨットで運河には入らない方が良い。

どうしても運河航がやりたいならレンタルボートを7月8月を外してレンタルして本当に綺麗な部分だけを見て回ると言うのがお勧めです。

やって見て初めて解ることでした。


 さて今からPort Gruissan に帰ってメインマストとミズンマストを立て、セールをセットしなければなりません。
セールのセット解除に一日かかったのですが、セットはその3倍もかかる作業となるでしょう。

ガフリグのメインセールセットはセットした後の調整などまともに走れるようになるにはまだその上の微調整が必要です。

大騒ぎをして色々な人のお世話になりお金も使いました。

花丸は傷だらけでボロボロになりました。
(僕は見かけはあまり気にしない方ですが、これほど傷だらけになるとやっぱり綺麗な方が良いなと思います)

もう一度やるかと言われたら決してやるとは言わないでしょう。

でも、世界一周の経験の内ほとんどのヨットがして居ないよい経験が出来たと満足です。


豚もおだてりゃ木に登る そして 「船も水門を通れば山に登る」 と言う事が解る貴重な経験でした。

僕のわがままに協力して下さった皆さんに心から感謝したいと思います。     



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