238 エンジンがかからない (2020/05/25)

 3月4日にスペインへ来てから1週間くらい置きにエンジンをかけていたのが5月14日いきなりかからなくなった。

5月9日にエンジンをかけた時は全く問題無く快調にかかって回って居た。

症状はセルモーターのギヤを押し出すカチッと言う音もしない。

僕はセルモーターがおかしいのだと想い予備のセルモーターを持って来ていたので取り出してみたが一度船内を駆け巡った海水に浸かったので、表面は綺麗だが内側が錆びていてとても使えるとは思えない。

それは諦めて今エンジンに付いているセルモーターのギアを押し出す部分を分解してみた。
分解してもどこが悪いのか解らないのでそのまま元に戻した。

さあ困ったぞと思い史さんの友達Rafael君に頼んで欲しいと史さんにLine連絡した。


 コロナウイルスの規制緩和第一段階で今まで動けなかった船が動き出し仕事がどっと押し寄せてきたと言っていたがそれでも時間を作って来てくれた。

ハイエースのような大きな仕事車に沢山の工具が積んである物の中から必要となりそうな道具を大きいキャリアに積んで花丸の後ろまで持って来て、
先ずはエンジンを見たいと船に乗り込んできた。

最初エンジンバッテリーは独立して居るか、サービスバッテリーとは繋がっていないかと聞いてきたので、
ずっと専用の40ワットほどのソーラーチャージャーに繋がっているだけで独立バッテリーだと伝える。

その上でバッテリースイッチを入れてセルを回そうとしたが、もちろんうんともすんとも言わずカチッと言う音も出ない。


 ラファエル君はテスターでセルモーターの端子を当たり、バッテリーを当たりもう一度バッテリースイッチを入れ直して居た。

エンジンバッテリーにはデジタルボルトメーターが付いており、スイッチを入れると13,3ボルトと表示される。

バッテリーはウインドラスと繋がっていないかと聞くので、
ウインドラスを使用する時は別のスイッチでウインドラスと繋ぎエンジンがかかっている時にウインドラスを使うと説明。

何アンペア流れるウインドラスなのと聞かれたが僕には解らなかった。
ウインドラスの取説にはあるだろうが取り出すのが面倒だった。  


 Rafael君はいきなりバッテリーの容量が落ちていると見たようでした。

僕は13ボルト以上の電圧があるバッテリーの容量が落ちているとはとうてい考えられなかった。

そして彼は車に帰ってスターターケーブルコードを持って来てサービスバッテリーとエンジンバッテリーを繋いでテストすると言う。

太いケーブルを繋ぐとセルモーターはうなりを上げエンジンは一発でかかった。


 僕はRafael君に液漏れしないシールドバッテリーを注文し彼はその場で電話で発注し30分後に持って来てくれた。

有り難かった。

古いバッテリーは持って帰ってもらった。

バッテリーの善し悪しも有るが普通の大型車に使う様なバッテリーは過放電・過充電を繰り返すと寿命が一気にに短くなるそうだ。

彼が言うにはウインドラスが問題だろうという。

僕はチリの多島海で30回以上 嵐の無い日は毎日のようにアンカースポットに入ってアンカーを打っては上げる事を繰り返したというと、
それがバッテリーを駄目にした原因だと教えてくれた。

カナダで古い友人のクリスチャンがバッテリーを買いに連れて行ってくれたのを思い出す。


 僕もオプティマバッテリーという一気に大容量の電気を取り出す事も出来、急速充電も大丈夫な海用のバッテリーが有るというのは知っていた。

しかし、値段が普通のバッテリーの3倍以上もする。

ちょっと買う気にはなれなかったが、よく考えてみると海の上ではお金を出しても安いバッテリーでさえ買う事は出来ない。

それなら少々高くても確実に大丈夫なバッテリーを乗せて出航するべきだった。


 Rafael君の13ボルト以上有る電圧計を見ても、ソーラーチャージャーで充電されているのを見ても、バッテリー容量を疑ってかかった経験は大したものだ。

自称エンジニアは沢山知っているが余程経験を積んだエンジニアでないと出来ない難しい仕事だったと思う。

Rafael君ありがとう。

僕も又ひとつ勉強になりました。
舶用エンジンの事が解るのもシーマンシップのひとつなのです。

昨日バッテリー代金だけの納品書が来た。
バッテリーを取りにいって持って来てくれた手間代やバッテリーが悪いのだと見抜いてくれた技術料などは入って居ない。

仕事はしていないからとバッテリーの代金しか受け取ろうとしないのを無理やり少しだが受け取ってもらった。

彼もニッコリしたがそれ以上に僕は嬉しかった。



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