2001/3/8 ヨットの自作

 思い出します。およそ20年くらい前に、ヨットの自作が流行りました。Y-メンズクラブやY-14クラブなど全国組織もできましたが、何人の人が完成させたのでしょう。あれからもう20年ヨット作りに励んだ若者たちも今では40から60くらいのおじさんになってしまいました。

 そして、今では自作をやるなどという話はとんと聞かなくなりました。元々ヨットを自分の手で作ろうなどという人は内向的で、声が小さい面もあると思いますがあまり目立たない存在ではあります。

 ヨットの自作に必要なのは体力とお金と余裕と今は流行らない根性でしょうか?それと根気、その上に頭の良さ、スマートでなければ前例の少ない仕事はやれないのです。

 また完成させた殆どの人が10年以上の歳月をそれに費やしています。周りの方たちの苦労も並大抵ではなかったと思います。

 上手下手はあると思いますが、先ずはチャイン艇の工作から初めて、小さいラウンドボトムのディンギーを作り、それからクルーザーにかかるという一見遠回りなようで、一番近道を行った人は止めるにしても最後のクルーザーを物にするにしても痛手は少なかったと思います。小さい船の時に向いていないと思った人は止めたでしょうし、腕が上がってから作ったクルーザーはそれなりの物になったでしょう。

 作り終えて無事に進水させ思う存分乗っている人も知っていますし、6〜7年 根を詰めてやったが精神的に行き詰まった人、体をこわしてストップしたままの人、最初からクルーザーをねらってかけ声だけでいっこうに進まない人、色々な人がいます。総じて儲けにもならない名誉も得られない地位が上がる訳でもないことに青春の大半をつぎ込もうという人なのですから、人が良いといえばこれほど素晴らしい人たちはいません。ヨットの自作者は特別天然記念物か何かに指定して種の保存をはからねばいけないような人種です。

 

 そんな自作者のある方から、青春の思い出を最後まで仕上げたいので、何とかしてほしいという依頼がありました。体をこわして自作を頓挫してしまっていた人です。これを仕上げるにはまだ今からプラスチックの船なら新艇が買えるほどお金がかかるというのをいくら説明しても、それを承知の上での依頼です。もう10年以上ストップしたままだそうですが、それにしてはきれいな状態で保たれていました。人間10年も状況が変わらないということはまれでしょうし、ストップが10年も続くとそれまでの事をそのままやれる状態にある方が不思議です。その人の場合は、私に何とかしてほしいと依頼してきたわけです。

 私の場合はプロですので、同じ時間でアマチュアの何倍もの仕事をこなしますが、それにしても後半年はそのことに集中しなければならなくなります。

 彼はお金出し係に徹してくれるでしょう。これは今だからいえることですが、ヨットは乗る物で作る物ではありません。体力と、知力と、気力と、お金と、根性と、周りの応援と、それとヨット作りが好きで好きでたまらないというのであれば別ですが、その一つでも抜けている人は造船の腕が確かなプロに発注した方がよほど良い結果になると思います。いくらお金がかかってもそれを自分の得意な分野で稼ぐ方が良い船を手に入れたいだけなら圧倒的に得です。

 

進み具合は最近の仕事の部分で写真を入れながらお見せする予定です。

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