2001/4/26 木造ヨット制作

 ヨット工作教室に始まって、今月は全く楽しく過ごしています。毎日木造船にさわれる仕事なのです。どうしてそうなったのかは解りませんが、木の船を造っているときが仕事では一番楽しいときです。

 みなさん小学校の時から木や竹を小刀で削った経験はお有りでしょう。今の小学校では小刀は持たせてくれないのかも知れませんが、私達の年代では(50歳に近い)男の子は小刀無しでは遊べないくらい毎日小刀のお世話になっていました。

 どうも私のヨット工作はその続きの線上にある様です。と言いましても小刀もノミもカンナも手ノコも殆ど使わないのではあります。機械でどうしても出来ない所(例えば船内の細かい細工)はコストを考えると仕方なくではありますが、体や頭は喜んで手工具を使うことになります。

 鋸屑にまみれて、カンナ屑にまみれてと言うのがいかにも大工さんみたいで面白いと思うのです。最近は家の大工さんも釘でなくて木ビスを多用するようになった様ですが、ヨットの最近の工法では殆ど釘は使いません。木ビスでさえ使わなくなってきています。全ての接合をエポキシ接着剤に頼っても大丈夫な接着強度が出るようになったからです。

 木造ヨットを作ると言うことは、ある種類の人間にとって楽しいことではありますが、誰にでも奨められる様な事ではありません。多分 家を自分で建てない人が圧倒的に多い日本では、何でも自分でやってやろうと言う気質が他の国の人たちに比べて劣っているからかも知れないと思ったりします。

 ヨットの自作を思い付いて図面を買ってもその90%くらいは船にはならないで机の引出しか本棚に眠っています。さて何が問題なのかと考えてみると、どうもそれは場所の確保が一番の大問題の様です。私が横浜を去ったのも多分それに薄々気付いていて、田舎なら場所くらいなんとかなるだろうと思っていたからだと今になって思います。

 木造ヨットを次々と作ってみてなるほどこれは私にぴったりの仕事だと思えるようになりました。まず体と頭が7:3くらいの割り合いで心地よく使える。慣れてくるとどんどん頭は次の慣れていない仕事をいかに上手くこなすかと言う事に使われるようになります。とどめなく次々に新しいアイディアが湧いてくるのは楽しい物です。船つくりを重ねるごとに、だんだんと手も仕事を覚えてやる事がきれいで早くなります。

 ヨットつくりは粘土をこねあげるのとは違い芸術性は凄く低いと思います。しかし数字で 理論で自然の法則に溶け込もうとする工業製品的な面と、機能美と言うような物を持っています。それと乗り手としてのセンスがどうしても作った船に現れると思います。生きざまが現れると言っても良いかも知れません。 

 私は沢山の木造船とそれを作った沢山の人を見てきましたが、人にそれぞれ個性があるように、その作った船は作った人の個性を反映した物となります。表面ピカピカの船、造りがしっかりしている船、どう見ても泥臭く田舎臭い船、昔の古典工法にこだわった船、使いやすさを徹底して追求した船、コスト目的バランスのとれた船、凄くいい加減な何も解らないでただ船の格好をしている船。やっと今になってどんな船でも作れるようになったと思います。貴方ならどんな船をお望みですか?

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