2000/4/20 4 エポキシ接着について

 ヨット工作と家具や家の仕事の大きな違いは、一つは接着剤の違いに有ると思います。(その他では各部分が平面で構成されているか、曲面で出来ているかの違いでしょうか)接着には昔子供の頃から馴染みの深いボンドと言われる酢酸ビニール系の白い接着剤は、ヨットには全く使えません。これは水に解けてしまうので、湿気の多い内装用にも、ヨットでは使えません。昔はユーロイド等も使いましたが、いまでは少々の空間ならエポキシ自身で埋める事が出来、水に強くて長持ちすると言われる高分子のエポキシと言う接着剤を使います。普通は2液性です。2液性と言うのはA液とB液を混ぜて固まると言う意味です。A液が主材でB液が硬化剤です。その他にも3液性と言うのも有ります。これは、エポキシでは無いのですが、ポリエステル樹脂の中にはもう一つ硬化促進剤と言うのが有り、それを抜いて3液性で発売されている物は夏を過ぎても促進剤が入っていないので、使用する事が出来ます。使用には主剤と硬化促進剤と、硬化剤の3液を混ぜます。普通の2液だと硬化剤を入れなくても、温度が上がると硬化が始まってしまい、長時間使わないでおいておくと使えなくなってしまいます。


 さてそんなエポキシですが、使う時に必ず守らねばならない事が有ります。
?雨の日とその次の日の湿気が高い時は使ってはいけない。(私は接着をする時は1ヶ月記録式の湿度計と温度計を必ず見る事にしています)



?接着面の油分、水分、汚れを完全に除去する。
?A液とB液の混合比を、はかり等を使って厳守する。
?撹拌は確実に混ざるまで長時間行う。(およそ5分位混ぜる)
?接着剤を接着面両面に塗り込む。
?圧着したら、24時間は動かさない。(20度摂氏の時)
?必ず必要な温度を必要な時間保つ。(普通20度摂氏で24時間)
?買って1年以上経つ古い物は使わない。
これだけの条件は、最低必要な条件です。


 木工用として売られているエポキシで最高に良いと思ったのは、ニュージーランドのエピグラス社のエピグルーと呼ばれる物です。何処が良いかと言うと、流石ヨット自作者が多いニュージーランドだけあって、それは木造船を作る為に作られたエポキシです。温度管理されていない常温で、粘度が丁度よくて、塗り付けた時に良く伸びるのに垂れて来ない。(値段は高いが扱いよいし、同じ重量で日本製のエポキシの倍くらいの面積を接着する事が出来ます。それに垂れないので手や衣服が汚れ難い。)しかも硬化したら圧倒的な強度が出ます。おまけに混合比に多少の余裕が有るようです。


 これだけの事を毎回の接着で必ず守って、舟を作って行くと言う事は素人には至難の技です。かく言う私も何回失敗した事か、習うより慣れよ!で何千回もの接着をして来た訳ですが、それでも時には1から8の条件を充たさない接着をして失敗してしまう事も有ります。もしその失敗が取り返しのつかない船体だったりしたら万事きゅうすです。それから、木材にはチーク材の様に木材自身が油を大量に含んだ物が有りますが、そう言う木材はどうあがいても接着は上手くいきません。最近の工法にチーク材が使われなくなった原因はそこに有るのです。今ではチーク材は魔材として擦れる部分等に木ビス止めで使うのが普通になりました。


 本当に接着が上手く行っているかどうかを試すのは、毎回別の木を接着しておいて、破壊テストをする事です。たたき壊してみて、接着以外の部分で破壊されたら。(材料破壊なら)その接着は成功と言う事になります。


 確実な接着が何時でも出来ているかどうかは、木造船大工の腕の重要な部分です。

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