声の大きいヨット関係者(2001/10/24)

長く海の広場を更新できませんでした。
アフガン問題に心が奪われていたこともありますが、
仕事が忙しかったのと、ヨットについて書こうと思うことが見つからなかったからです。

今から日本に寒い冬がやってきます。
ヨット業界はもうとっくに真冬の様相です。
冬が好きな人も居ますが、私はどちらかというと夏の方が好きです。
瀬戸内海の真夏はいけませんが、貿易風帯の暖かくて一定の風が吹く夏は最高です。

瀬戸内海のヨットシーズンはあきらかに冬ですね。

先日一仕事が終わりクルーザーを琵琶湖に浮かべました。
自作途中の船の最終仕上げを半年かけてやりました。
オーナーも納得の手抜き工事でした。
いい加減に(ちょうど良い加減に)手を抜くというのは大変難しいことです。
何もかも解って初めてできることだと思いました。
自作の人が時間がかかるのは、
どこを手抜きして良いか見当がつかないのでどこもかしこもみんな最高レベルの力の入れようなので、
プロの3倍も4倍も時間をかけて、
肝心要のところが抜け落ちているような船になってしまうのです。


さてその船の進水式で面白い光景を見ました。
オーナーの関係者のヨット乗りが沢山集まったわけですが、
おしなべてヨット乗りという生き物は声が大きい。
親切心から、自分の知っている範囲でいろいろと的はずれのアドバイスをしてくれます。
いわく、こんなバウ(船首)の船型ではデッキに波をすくう。
ステー〔マストを支えるワイヤー)をもっと締めないとゆるすぎる。
マストをもっと後ろに倒すべきだ。
ラダー〔舵板)が小さすぎる。等々言いたい放題です。

グループの中でもヨットをよく知っていると思われる人が、
声を大きくしてのべたてるのです。
おそらく私の1/10の艇種にしか乗ったことが無くて、
1/100以下の時間しか乗って無くて、
どうしてそんなに真反対のことを大きな声で言い立てることができるのでしょう。
自然に対しては圧倒的に謙虚であるべきヨット乗りがそれでは困ります。

横山氏のサバニ船型のバウはめったに青波をすくう事はありませんし、
木造船はFRPの船のように船体が柔らかく歪むようなことはないので、
ステーはFRP船よりもずっとゆるめでよいのです。
マストの傾斜は図面通りでまず走ってみてから微調整をするものです。
ラダーの大きさは設計者が考え抜いて決めたもので、
ぱっと見て解るようなものではありません。

何の悪気もなく善意でと言うのが全く困ったものです。
今回ばかりでなく、あらゆるヨットシーンで外国も含めてよく感じることです。
その親切があだになると言うことが解らないようです。
自分の方が良く知っていると思われることを声を大にして人に教えたくなるのが、
ヨット乗りの性かと思ったりします。
本当に知れば怖くて断定的なことはなかなか言いにくくなるものなのです。

プロとしてヨットを扱っている人たちは多くの人がその上を行きます。
声が大きくなかったらプロにはなれないのかなと思ったりします。
私が主役の船の納艇を何故か地元のプロ達は図面も見ないでああだこうだと決めてくれます。
他でもよく経験することです。

今から近くのたくさんの人のお世話にならないといけないオーナーのことを考えると、
私が出しゃばって押さえつけてしまっても何も良いことはないと思うので、
疲れて眠ってしまうのが一番です。
私はヨット乗りでヨット作りですが、できあがった船で楽しむのはオーナーなのです。
私が仕上げた船で、安全に楽しいヨットライフを過ごされることを願っています。

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