2000/4/25  5 FRPについて

 今現在ヨットに関わっている人は、木造船を作る人でもFRPの知識が全く無いでは済まされない状況に置かれています。私がFRPと始めて接したのは26年前です。ヨットの量産工場に勤めだして、直ぐにガラスマットや樹脂に関わりました。しかしその時は何の知識も持たないで、ただローラーに樹脂をつけてガラスの上を転がせば舟が出来るので、ただそれだけで一人前のヨット製作者の様なつもりになっていました。ところがそれは綺麗なモールドを作った木造船が作れる船大工が居ての話で、実はその他大勢の人はガラスと樹脂で型の通りの舟の模倣をしていただけだと気がついたのです。FRPのおかげで綺麗な船体やデッキを持った舟が、腕の良い職人を使わないでも、早く大量に安くできる様になり、今はFRP舟が全盛で木造艇は値段も高く、作れる人も少なく、時間もかかりヨット全体の1%も無くなったと思います。良いも悪いもない市場原理でそうなってしまったのですから、ヨットに関わっている私はFRPの事を良く知らないと仕事にならないのです。本当は木造船を作り続けたいのですが、そんな仕事がいつも有る訳では有りません。それにFRPの技術と木造船の技術は相容れない物では無くて、補い合ってどちらでも出来る舟作りの方がまともだと思います。基本は木造船ですが、それしかやらないと言うのは時代錯誤でしょう。


 それでは本題に入ります。強化プラスチック(FRP)を大きくわけると骨材となるガラスやカーボンやケブラーやマイラー等とその形。それと樹脂に分けられます。ガラスは5センチの長さに切った物をランダムに置いてマットにした。ガラスマットと1本1本のヤーンを織った物とに分けられます。それが叉1平方メートル当たりの重さで分けられています。それとガラスに樹脂が染み良いかどうか、処理の方法でも分けられます。使う場所や方法で何をどう使うのかを選ぶ事が大切です。又ケブラーやカーボンを使わないと軽さと強度が出ない所では、高くなってもそれを使います。解らなければ製造元に問い合わせれば丁寧に教えてくれるでしょう。


 樹脂にも色々有ります。最高級のリポキシ樹脂から、イソ系、ビス系、オルソ系と種類が沢山有りその中でもまた型用や、対薬品性に優れた物や、耐水性に優れた物や、炉に入れて温度を上げても硬化やせの少ない物や、色々に分かれています。これもメーカーに聞かないと普通の人では知る由も有りません。その中も又2液だ3液だと分かれているし、何がどうなっているのやら頭がこんがらがってしまいそうです。大量に使う時はメーカーの指導を仰ぐとして、普通に穴の開いたのを修理する様な時の事をお話しておきます。修理は二次接着ですから最高級の樹脂(リポキシ樹脂)を使う必要が有ります。ホームセンター等に小分けで売っている樹脂とは接着力がまるで違うのです。見た目は同じ様な物ですが、使って壊してみれば分かります。よく漁船等の修理で何でも良いからべたべたと張った樹脂が剥離しているのを見かけるでしょう。あれは施行の稚拙さも有りますが、樹脂が良い物で無かったら、二次接着は殆どが力にはなりません。リポキシ樹脂を使って、サンディングの後をスチレンモノマーで拭いた後2次接着積層をすれば問題なく元の強度を取り戻す事が出来ます。


 木の仕事の方が格段に難しいのですが、殆どの人は木は小さい時から触った事が有るので、知らないFRPの仕事にはお金を出すのに木の仕事にはなかなかお金を払おうとしません。その辺の所が施行する方としては考えてしまう所です。FRPは基本的な事さえしっかり押さえれば、1.2年もやればプロとして通用する様になる簡単な仕事なのです。どんな場合にどんな樹脂を使うか。硬化させるには硬化促進剤と硬化剤が必要で、表面の空気を遮断しないと空気に当たる面は硬化しないので、完全硬化にはパラフィンを入れて表面の空気を遮断する。叉硬化するまで風を送って表面から揮発するスチレン分を飛ばす。そんな基本さえ解かって、あの強烈な匂いさえ防げば、なんと言う事はない簡単な仕事なのです。

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