52 外洋帆走中の珍経験-3(ジェット戦闘機とヨット)(2002/03/10)

ドッカーン ジュルジュルジュル(遠ざかっていく音)というとんでもなく大きな音がした。
私は慌ててパンツをはいてコクピットに飛び出した。
オレンジ色の光が3つ遠のいていくところだった。

今でもあの時の航海中の暑さを思い出す。
私と鴎盟(おうめい)の太平洋一周 最後の寄港地グアム島入港の 3日ほど前のことだ。

暑くてたまらないので、
できるだけ日中は昼寝をすることにしていた。
船底に一番近い通路にタオルケットを敷いてその上に素っ裸で眠っていた。
追っ手の風の帆走中はほとんど風を感じることができない。
それで船内では一番低い通路の部分が一番涼しい。

翌日も同じ昼過ぎにドッカーンときた 今度は一機だ。
その後ジュルジュルジュルとオレンジ色のジェット吹き出し口を見せながら遠のいて、
点になったと思ったら、
又引き返してきてドッカーンとやってくれた。
今度はパイロットの顔が見える距離だった。
そしてもう一度。
私が飛び上がって両手を振って挨拶をすると、
はっきりとパイロットの顔が笑った。

私は超音速というのを体感できた。
戦闘機が通過してからその後ろに引っ張ってきている音をいっぺんにまき散らす。
とんでもない爆発音のような音だ。
ドッカーン

それに引き替えヨットのたてる音はなんと控えめなことだろう。
波を船首が切り裂くチャプ チャプ、
または調子の良いときでザバー ザバー、
時々嵐の時は波の体当たりでドンという音もあるが、
とにかく乗っている以外の人が聞き取れるような音ではない。

私はヨットのたてる波切り音が大好きだ。
あれを聞くと直ぐに眠くなる。
ヨット乗りの子守歌なのです。

海の上では耳は大切なレーダーです。
異変を最初に知らせてくれるのは、
微妙な音の変化や船の傾きの変化です。

5感を研ぎ澄ましてヨットと海に向かってください。

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