54 船底塗料の話

ヨット乗りの皆さん いよいよ船底塗料塗りのシーズン到来ですね。

暖かくなり始めたから船底を綺麗にしてさあ今年もヨットに乗るぞ!
と言う感じもありますが、
本当に今から何ヶ月かが船底塗料塗りのシーズンなのです。
船底塗料など何時塗っても同じだろうとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、
今からがシーズンです。

船底が汚れているヨットはどんなに上手な乗り手が乗っても、
いくらエンジンを回しても進むものではありません。

元々小さいヨットのパワーに対し、
海草が生えると船底表面の摩擦抵抗が極端に増えているからです。

今はっきりと解っているヨットを進ませないように働く抵抗は、
摩擦抵抗と造波抵抗です。

その内の造波抵抗は船体の形状やサイズで決まります。
これは変えようがありません。

摩擦抵抗の方は浸水面積を小さくするために不要なものを船から下ろすことと、
船底をいかに綺麗に保つかで全く変わってきます。

一番良い船底塗料を塗る時期は、
一年の内で一番海草が伸びる今の時期の直ぐあとです。
海水の一番冷たいときが一番海草は伸びます。
外気温より2ヶ月くらい遅れて海水温は一番冷たくなります。

海水が冷たくなって海草が伸びきったところを綺麗にして、
そのまま船底塗料を塗って伸びない時期をやり過ごす、
という のが一番コストパフォーマンスを考えると良い方法でしょう。



私が岸壁にヨットを抱かせて瀬戸内海の大きな干満の差を利用して、
上下架料なしで船底塗料を塗っていた前の船の時は、
年に3回船艇塗料を塗っていました。

だから同じサイズの船には走り負けることはまずありませんでした。
21feetの船で25feet クラスを追いつき追い越したこともあります。

そのくらい船底塗料塗りは船の走りに大切な仕事なのです。

あのマンモスタンカーでは船底塗料の値段と施工する国の工賃とドッグ料、
そのまま走り続けたときの燃料消費とをパソコンで解析して、
次は何時 何処で 船底塗料を塗るか決定しているそうです。

それはそうでしょう、
船底の汚れ具合により、
燃料代が一航海で何百万円も直ぐに変わってくるのだそうですから。


船底塗料塗りで注意したいのは、
どんな塗料を選ぶかと言うことですが、
高いものがよいとは限りません。

同じ港の周りの船が一番よく使っているものを塗るのが正解です。
港の環境によって、
今現在その港で一番多く使われている船底塗料が、
その港では一番長持ちすると言うことを頭に置いておきましょう。

レーシングヨットが塗っているような高い船底塗料はまず長持ちしません。
高い安いに関係なく、
いかに頻繁に出艇するか、
いかに頻繁にちょうど良い時期に塗り替えるか、
又その港の条件にぴったりの船底塗料を塗ったかどうかで
船底の綺麗さは決まります。

頻繁に出艇するというのは、
今の船底塗料は海洋汚染防止のため鉛などのひどい毒性のあるものを混入していなくて、
船が走ることで船底塗料自体の表面が水に溶けだし、
根を生やそうとしている海草の胞子を表面から取り除くという方法で、
船底の綺麗さを保っているからです。

セルフポリッシングタイプの船底塗料といいます。

海草よりずっと高等動物であるフジツボやカキが付くほど出艇しない船は
昔のようなとんでもない毒入りの船底塗料を塗らないと、
綺麗に船底を保つことは出来ませんが、
もうそんな船底塗料は売っていません。


さあそろそろですよ、

春一番が吹き終わったら、
暖かい春の日に自分で船底を塗り替えて、
バラストやエンジンシャフト周り船体そのものと、
自分の目で確認して、

安心して今年も綺麗な船底で一年楽しくヨットに乗りましょう。

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