65 ヨット造りは楽しい(2002/11/26)
ヨット造りは次々と目新しい難問にぶつかるので実に楽しい仕事だ。
他の物造りほど分業されていなくて、
一から十までほとんど一人で出来る珍しい仕事だ。
家大工などは基礎屋さんや瓦屋さんから始まってありとあらゆる細かい部品の専門家に、
外注するのが大工の棟梁の仕事ですし、
車作りなどはもっと細かく分業化されている。
しかしヨットとなるとそうはいかない。
専門的に外注に出すほど仕事はないし、
ヨットに適した物を造ってくれるところもないのが現状です。
ヨット専門の部品などはほとんどが外国からの輸入と言うことになります。
大物ではエンジンやマストやセールはだいたい外注ですが、
その他の物は有る物を仕入れると言うことになります。
材木一本から始まって、
接着用のエポキシ、
ステンレスのボルトナット、
ステンレスの木ねじ、
塗り用のエポキシ、
塗り用のウレタン、
仕入れなければならない物は一人でする仕事にしては 数え上げればきりがないくらい有るでしょう。
それらを加工する道具類も、
治具を造ったり、
売っている物を加工したり、
何とも色々なことに精通していないと、
一艇の船を造ることは出来ません。
色々な分野のことをまんべんなく知って 工作が出来て 初めてヨットを造ることが出来るのです。
アマチュアビルダーでも沢山の人が自作しています。
多分今までのその人の知識や技術や全人格までをも問われるようなヨットビルダーの世界に
魅せられてのことと思います。
しかし何しろ経験が浅いので、
肝心な仕事を不注意に進めてしまったり、
どうでも良いような所に力を注ぎすぎたり、(この手のアマチュアビルダーの方がましではあります)
腕を上げたアマチュアビルダーは私に必ずそれを言います。
一仕事一仕事のここまではと言う限界を知っている私のことを、
手が早いと言うのです。
早い遅いというのは比べる人が有っての話なのですが、
プロのビルダーで私と同じ仕事をしている人を知りません。
勿論一日中ヨットを造っている私はアマチュアビルダーと比べられることは無いくらい速くて綺麗な仕事をします。
経験も道具もアイデアもアマチュアの何十倍も有るのですから、
そうでないと情けない話になります。
ヨット造りは楽しいのでお金を払ってもやりたいアマチュアビルダーが居るわけでしょうが、
本当の楽しさはヨットに乗るのと同じで、
先が見えない奥深い技術の探求にあるように思います。
悟りの世界のようなもので、
いくら修行してもセンスのない だめな者は だめです。
しかし、
チャイン艇、
ラウンドボトムディンギー、
それを経てクルーザーへとヨット造りの王道を歩まれたアマチュアビルダーの中に
時に域に達している人を見かけます。
怪しいプロよりも数段上の素晴らしい船を造る人たちが極まれにではありますが 居ます。
私はヨット造りを仕事としたことを最高に良かったと思います。
そのヨットに乗るのがお金にならない次の仕事です。
仕事ってお金儲けのことと思っている人がほとんどでしょうが、
それだけではないと言うことを私は知っています。
ヨット造りは実に楽しい仕事ですよ。