2000/5/27  8 紫外線

 普通の人にとってのヨットは利用頻度の少ない物だから、時間当たりコストは車等とくらべるとべらぼうに高いものになります。車にはお金を使う人でも、ヨットになると途端に厳しくなるのは恐らくそれを解っているからだと思います。BMWやベンツに乗って修理仕事の依頼に来てお金が無いから安くしてと言う人の気が知れませんが、要するに車に使うお金は有るが年に何回しか乗らないヨットに使うお金は無いと言う事で、私の中では了解しています。


 しかし、命を預けるヨットですから基本的な所は妥協してはいけません。私の所に修理に来る前に、自分できる事は自分でしておくのが、ヨットを健全な状態で長持ちさせる秘けつです。車と違って船検では、法定備品を積んでいるかどうか位しか問題にならないので、船検を受けたと言うのと安全とは全く関係の無い事なのです。船の免許も持っているという事と安全とは程遠い所に有ります。呉々も車と同じ様に考えないで下さい。

 さて本題に入ります。ヨットは新品の時から最高の状態では無いと言う事は、船にはシェークダウンと言う言葉が有る様に、荒れた海で揺すってみて壊れる所は壊してそれを何度も修理して始めて、その船の最高の性能が得られます。そこまでは良く乗る人で1年も有れば達するでしょう。問題はそれからです、殆どの時間を港に舫われて潮風や雨や日光にさらされ続けるのです。そんなものがメンテナンス無しで長持ちするはずが有りません。普通の家でも10年も経てば、住み続けていて少しは世話をしていても、業者を入れないといけない様な修繕箇所が出て来るものです。年に何度かしか行かないで放ったらかしのヨットが全くそのままの状態である訳が有りません。校倉造の宝物殿の中に有る1000年の時を経た国宝も、もし紫外線に当り続ける海の上で保管したら、3年とは持たないでしょう。漆は1000年持つとかエポキシ接着は永久だとか、FRPはメンテナンスフリーだとか言う迷信に騙されてはいけません。それは全て空調の効いた冷暗所保存の場合の話です。ヨットではそんな保管方法は考えられない話です。もし出来たとしてもそれでは使う事が出来なくなってしまいます。FRPの船体の例で行きますと、できるだけ紫外線を遮る為に、ワックスを頻繁にかけるとか、表面コートが痛んで白っぽくなったら、ウレタンでもう一度表面を覆うとか、兎に角メンテナンスフリーでは無いと言う事を常に意識して、毎年それなりのメンテナンスをしてやる必要があります。セールにも使っていない時間の紫外線よけは必要です。ステンレス部品も海の上では電触でどんどん悪くなるので、チェックが必要です。船の寿命を短くしている一番の厄介者は紫外線です。これに対処する方法は生き物の様に表皮を常に新しく変えて行くしか無いと思うのですが、ヨットは生き物では無いので、塗りが大切になって来ます。紫外線に最高に強いと思われる墓石でさえも300年もすると字が読めなくなるくらい劣化します。永遠にメンテナンスをしないで良いものなんて無いのです。せめて乗る人自身のの耐用年数くらいヨットを持たそうと思えば、無生物であるヨットには紫外線を遮る為のメンテナンスは欠かせないものです。バブルも弾けてお金の余裕は無くなったかの知れませんが、ぞれだけ時間や気持ちの持ち様で気分的にも余裕が出来て来たと言う事でしょう。大いにヨットに行ってせめてメンテナンスくらいは自分でできる範囲でやろうでは有りませんか。

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