82 外洋ヨットの普遍性 (2003/11/04) 

私は今自分にとって最高の船を造ることに全精力を傾けています。
それは外洋ヨットという普遍性を持ったヨットでもあります。

 

どんな船が最高かというと、
先ず船長に関係なく船の全重量は4トン以下であること。
理由は簡単です。
ものすごくゆっくりした行き足の着いた船を岸壁に下りて一人で支えて停止できる重量です。
又少しくらいの風なら一人の力で岸壁から引き離して 船体と岸壁の間にフェンダー(防舷材)を挟むことも出来ます。

 

船内の高さは身長とぴったり同じが理想です。
私の場合は166センチメートルです。

シーレグと言って、
海では必ず身構えて身長より多少低い体勢を取るのがシーマンです。

手を真っ直ぐに伸ばさなければ届かないような高い天井は
嵐の時には体を支えるハンドレールを取り付けてあっても ぶら下がり健康器ではあるまいに体を支えることは出来ません。

広い船室は荒れたときに体を吹き飛ばされる距離が伸びるだけ危険です。
出来るだけ小さく仕切った船室が良いと思います。

もしも自分のために設計していない船を買うならヘッドクリアランス(床からデッキまでの高さと自分の身長の差)は 0 以下が理想です。
背筋をぴんと伸ばして歩くのは凪のデッキの上だけで充分です。

 

船体の材質は木が良いと思います。
理由は今ほとんどの船がそうなってしまったFRPと比べ格段に断熱効果があります。
暑さも寒さも和らぎます。

住むなら木造です。
その証拠にFRP船でも船内は出来るだけ木造仕上げにしようとします。
FRP船の内側に薄板のような木を使うのですから強度には関係なく性能を落とす重量を増すだけなのにそうするのです。
人間 ホテルのシステムバスの様なFRPの入れ物の中では長時間は生活できないのです。

きちんと施工された木造船は FRPの船のように歪む事によって壊れないと言うようなものではなく、
30フィートくらいまでの小型船ならシェル構造のピンポン玉のような軽くて丈夫な船を造ることが出来ます。
施工法にもよるでしょうがトリプルプランキング(斜め三層張り)の エポキシ接着できちんと設計された船なら40フィートくらいまでは波にたたかれても船体がブルンブルン震えるようなFRP船のようなことはないでしょう。

デッキでもFRPヨットのツルンピカッと光ったいかにもかっこよい斜めの部分が多いドッグハウスは危険です。

 

大切なのは施工法です。
接着は雨の日とその翌日はやってはいけません。
水分や油分や気温その他エポキシ接着の必ず守らなければならない決まりは愚直なまでに守らないといけません。
その上で面と面の交わる角にはマイクロバルーンエポキシフィレットを付け補強します。
苦しい作業ですが今までの木造船にない強度が出ます。

どんなに荒れてドンドンと船体に水が激突するような音がしても、
ギーギーと昔の木造船や、
今全盛のFRP船のようなきしみ音がしなくなります。
(「萬丸」の冬の航海で実証済み、
風下側のステーが緩むという船体が歪む現象もありませんでした )

最後に全ての木部に防腐剤入りエポキシを塗り、
その上に低粘度エポキシを塗り重ねます。

そうすることで水と木を遮断するのです。

今までの木造船が長持ちしなかったのは 、
水と 栄養豊富な木 が直接ふれ合い、
木にバクテリアが繁殖して腐ってしまうと言う現象からです。

その証拠に今までの木造船はデッキの水漏れ箇所から腐ります。
船体の方は海水に浸かっているので少々水漏れしても塩水には木を腐らせるバクテリアはわかないのです。

出来の良い船で20年、
だめな船では10年が今までの木造船の寿命ですが、

私は30年はしっかりと造船時の強度を保つ船を造るつもりです。

 

飾りや見てくれを廃し
とにかく性能を追いかけています。

全部のデッキをチーク張りにはしませんが、
長時間滞在するであろうコクピットはチーク張りにします。
素足でも裸でも格段に居心地がよいからです。

又船室への階段も滑り止めのためチーク張りです。
使い勝手からそうしたものです。

船内の塗りはつや消しウレタン塗装というのがプロの仕上げですが、
それは磨きと塗りを重ねなければならず、
性能に無関係の部分で大変な労力を使うので止めにしました。

腐れ止めの低粘度エポキシ塗装のみで終わりです。

チークのこてこてのニス塗りを見せびらかすことがヨット乗りのステータスではありません。
あれは金持ちの道楽です。

自分にぴったりのヨットは紫外線を遮る為のペンキ塗りを毎年のように繰り返して、
なるべく安く長持ちするヨットなのです。



設計通りに作ります
船体船型やセールマスト関係

強度に関係のある部分などは自分の思い入れで変更したりは決してやりません。

船体を引き延ばしたり 船尾を伸ばしたり、
幅を広げたり、

マストの位置を変えたり、
セールを変更してみたり、

ちょっと弱そうだからとフレームを大きくしたり 数を増やしたり、

重大な変更を何とも思わないで軽々しくやるのが素人です。

その変更は船体重量に響きませんか?
本当にその部分は弱いと自分が命がけで証明したのですか?

思いこみは通用しないのがヨットの世界です。
設計通りに作って先ず走ってみてから(シェークダウン)壊れたところを直すのです。

だから命がけでヨットに乗らないヨット造りはだめなのです。

 

陸の便利な生活は持ち込みません
人間が生活するためにどうしてもこれはあった方がよいと思うものだけを船に持ち込みます。

朝起きて顔を洗ってトイレに行き食事をして、
セーリングして本を読んで海を見て、
適度な運動をして、
又食事をして、
セーリングをして本を読んで海を見て空を見て、
それから夕食、
シャワー、
睡眠。

これが一番簡単などうしてもやりたい船の上の生活です。

音楽を聴いたり絵を描いたりするかも知れませんが、
外洋では極シンプルな生活をしたいと思っています。

エアコンもウォッシュレットも 自動洗濯機も乾燥機も食器洗い機もテレビも、
およそ快適な陸地の生活は、
毎日お金を儲けることに集中するための生活の簡略化だと考えられます。

海でのヨットの生活は 目的を持たない自由で解き放された生活だから、
それらのものは必要ないのです。

日々の暮らしに必要な不便を克服する為の時間そのものを楽しむつもりです。


夢追い人の物語を毎日見に来て下さる方々に感謝します。
毎月の平均アクセス数は200件を超えています。

上のような私が目指す外洋航海に最高のヨットは、
他のショートハンド(少人数)外洋航海希望者にも当てはまる普遍的なものだと思っています。

リタイヤしたらヨットで世界一周をと考えている方、
色々な人が色々なアプローチでヨットの世界に入ってきています。

ヨットしか知らないへんこつ親父の言い分も心に留めて、
自分が本当に望んでいるヨットへの関わり方をもう一度問い直してみて下さい。

一人または家族ときちんとした外洋航海をしたいなら私に連絡を取って下さい。
貴方が真剣にシングルハンド外洋ヨットを考えているなら協力を惜しみません。

多分それが唯一私に出来る世の中への恩返しでしょう。

私にしかできない夢を追いかけます。

これは 「ラブバードテルアキ」
http://tubomi.boo.jp/
田中輝顕さんの帯広からのメールに触発されて今朝一気に書いた記事です。

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