99 エポキシ接着ダブルプランキング(2005/03/17)

プランクとは板の事だ。

ラウンドボトム(スムーズな曲面を持った船体)の船では、
シングルプランキング、
ストリッププランキング、
そして今回私がやっているダブルプランキング、
この前の「萬丸」や「花丸」で施工したトリプルプランキングなどがある。

特殊な例ではカナディアンカヌーの外板張りや、
低粘度エポキシと負圧コンプレッサーを使うコンスタントキャンバーなどの外板の作り方もあるが それらの工法は普通のヨット作りには使われないのでここでは取り上げない。


長い帆船の歴史を振り返って見ると
まず最初に現れたのがシングルプランキングだ。

昔の帆船などはみんなシングルプランキングでフレームと外板の接着には銅のリベットが使われている。
チャンチャンと言われるカシメて止めるやり方だ。

外板はその場の曲がりに合わせて広い板から切り出すので木の捨てる部分が多く木目も切れて大変ロスの多いやり方だ。

それともう一つ水止めに外板と外板の間にホーコンや獣脂やタールや色々なものを詰めた上に、
まだ外板が水を吸ってそれらの詰め物を圧縮する事によって水を止めるやり方だ。

外板同士の間に詰め物をするのだから当然外板厚みは厚い方がよいと言う事になる。

ヨットだと100フィートを超えるサイズの船でないかぎりシングルプランキングはデメリットが多い工法だ。

それ以上のサイズの船では外板を取り替えながら、
時にはフレームさえ入れ替えて 100年以上の年月を重ねている船があるのも確かである。

シングルプランキングは今では死に絶える寸前の工法という事が出来る。
真の技術の伝承者もいないし、
もちろん100フィートを超えるようなヨットはそうそう発注があるものではない。

シングルプランキングで小型艇を作ったら重くて走らなくて水漏れして短い寿命の船になる。
小型艇に40ミリを超えるような厚みのチークデッキを張るのはバカげた事だ。
だから合板の上にチークの薄板をのせてお茶を濁し、
作ったその年から真水を呼び込み腐り始める事になる。


その次に出てきたのがストリッププランキングと呼ばれる長い角材をフレームに沿わせて積み上げていく工法だ。

正立工法で先ずバラストを据え、
その上にキールを乗せて、
フレームを留めつけそれらを天井からぶら下げておいて、
キールの脇から角材を積み上げる。

エポキシ接着剤とアンカーファースト釘と言われる一度打ち込むと抜けない方向にギザギザの付いた特殊な釘を使う。
角材の太さは25フィートクラスで16ミリ角くらいでスカーフ繋ぎで前から後ろまで通す。

アンカーファースト釘はもちろんフレームやキールに向かっても留めつける。
隣のプランク(外板)同士は2枚半を貫くサイズのアンカーファースト釘を使う。

大変な量の釘を使うので重い船になる。

おまけにたいていは外板の隙間が開いたザル船となる。
制作途中 夜船内に点けた電球の光がプラネタリュウムの様に漏れていたなどという話は当たり前である。

自称プロよりアマチュアビルダーの中に一本一本のストリップ材を隣の材とぴったりくっついて接着できるように、
船首、中央、船尾と角度を変えて 仕上げておいては積み上げたきちんとした船を造った人を数は少ないが知っている。

そこまで手をかけたら大変な時間を必要とするだろうし売るための船としたら値段が合わなくなるだろう。

だからプロはザルで良いというのではない。

もちろんサイズの小さい 外板厚の薄い船の外板が水と接して木が膨張して水が止まると言うのでは
船の寿命は知れたものである。
そして強度もあっという間に損なわれる。


そして最後に現れたのがダブルプランキングやトリプルプランキングの船である。
初期の段階では外板一層目と二層目の接着にはリベットを使った。

間に和紙にペイントを染みこませたものを挟み込み大量のリベットで留めたのだ。

そんな工法が用いられたのは長期ではなかったがそんな船が存在したのを私も見ている。

その後リベットはエポキシに取って代わられた。
リベットはハードスポットになるがエポキシ接着は完全に上手くいけば面接着でハードスポットがない。

そこで
100%信頼できるエポキシ接着の技術を身につけたエポキシ大工の出番だ。

ダブルプランキングやトリプルプランキングでは船全体を面で接着するほどの大量のエポキシを使う。
チークが高いマホガニーが高いと言ってもエポキシの値段にはかなわない。
そして何よりも発ガン性物質であるエポキシ硬化剤は恐ろしい。

そんなエポキシを大量に使って船の形をした合板を作ると理解してもらいたい。

とても硬くてシェル構造というかピンポン球のような歪まない船穀が出来上がる。
おまけに合板は木口や木ビスを打ったりすると水に弱いので、
防腐剤入りエポキシを染みこませた後、
垂線下に使えるエポキシで船体をライニングする。

ここまで行くと手間はかかるがFRPよりも頑丈で軽くて歪まない長持ちする理想の船穀が出来上がる。

体の切り売りのような仕事だが 最高級の強度を持った木造船を目指したらこうなってしまった。
なるべく早く仕事を切り上げて乗る事に専念したいものだと思う。

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