馬の和鞍制作(2001/10/10)

どうしてヨット屋が馬の鞍なのか簡単に説明します。

和鞍は武具だそうです。
侍がいなくなり、日本馬が必要なくなった今 鞍を造る職人はいなくなってしまったそうです。
第一材料が手に入らない、樫の大きな根曲がり材が入手不可能だそうです。
そこで私に目をつけたのが、日本中を馬で旅する中川さんという人でした。
エポキシ積層で強くて曲がった材料ができないかと言ってきました。
日本に誰も作れる人がいないと聞いてむらむらとやる気が起きてきました。
私は人にやれないことをするのが大好きな天の邪鬼のヨット屋なのです。

現物を拝借した私は、まず一ミリ厚の突き板を買いました。突き板というのは、木の固まりをカンナかけの要領でそいで薄くした板のことです。

それを120枚重ねてエポキシ積層をして現物を上から見たとおりの格好に削りだしたところです。

現物の鞍の作らなければならない材料に40ミリ間隔のラインをマスキングテープを細く切って入れました。

必要なポイントの高さの変化を数字で追うためです。

横から見たところです。

ヨットのオフセットラインのようなものです。

裏から見たところ。

オフセットラインを入れて細かく採寸すると、左右が非対称だと言うことが判明しました。

それでも実用には差し支えないのでしょう。

上から見たところ。

全体は漆塗りで、中央には家紋が入っています。

おそらく江戸時代の作品だろうと言うことです。

実物と私が作ったものを重ねて精度を確かめました。
今からうねったようになっている実物にあわせて、高さを拾い出した点をプロットしていきます。
内外のプロットした点を結んで不要な部分をのみではつりとっているところです。
内外の点を結んだ線に向かって先に細かくノコ目を入れておいてから、ノミではつります。
昔の職人は一材一材違う木目を読みながらノミを使ったと思われますが、私の場合は積層材なので、目を見るのは簡単です。
裏表同時にどんどん荒くはつります。

一応現物と同じうねった木が荒くできあがったところです。

今から大型のベルトサンダーをかけてより細かく正確に仕上げます。

ここまでが2日間に及んだ荒削りの仕事です。
実際に手を下すのはあっという間の仕事なのですが、こうすればこうなるという考え方と、寸法取りが大変な仕事なのです。
今から表面の二つの峰を今度は現物から存在しない峰の仮想点を型を作りながらけがいて削り出します。

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