202 木造ヨット−2
木造ヨットはについて 木造ヨット(2001/6/29) と言う題で一度海の広場に書いているのですが、
木造ヨット−2 は違う視点からもう一度木造のヨットを見ていく事にします。
そんな気になったのは僕にとっては大事件の「花丸」バウスプリットが腐った事によります。
あれほど腐りに気をつけたつもりでも進水して11年 雨水が浸入したら腐るのは当たり前でした。
船首に2.1メートル突きだしている一角獣のようなバウスプリットはマストを作る材料と同じスプルース材で出来ています。
非常に粘りがあり接着性が良く軽い材料です。
但し柔らかくて部品取りつけの為にボルトナットで締め付けるとどんどん凹んでしまうような柔らかさなのです。
今度のバウスプリット船体との取りつけ部分は接着だけでは心許ないので太さ12ミリのステンレスボルト4本でデッキに留めつけてあります。(図面通り)
ところがボルト・ナットをあまりに思い切って締めたので大ワッシャーごとボルト頭が スプルース材にめり込んでいました。
最初から知っていたのです。
それでどうなるかというと、
凹んだボルトの周りに降った雨が溜まるのです。
木の表面を出さないようにガラスクロスを低粘度エポキシでバウスプリットに巻いていたのですが、
その薄いガラスクロスを引き込んでボルトを締め込んだ物ですからボルト頭周りに何時も水が溜まっていました。
不安になり水たまりが出来ない様にシリコンでボルト周りを埋めていました。
でもそんな小手先の応急処置では雨水の木への進入は防げなかったようです。
白状しますと「花丸」が進水してから今までにデッキを貫通した航海灯用の電線や無線のアンテナ線やレーダーアンテナ線やチェーンプレートのデッキ貫通部分から雨漏りを起こした事があります。
パルピットをデッキに固定する貫通ボルトから雨水がしたたり落ちて船内に水が溜まった事もあります。
コクピットスカッパーの取りつけ部分から雨漏りした事もありました。
気がついたら直ぐに手直しして雨水の浸入を極力抑えたつもりですが、
もしかすると知らぬ間にどんどん雨が入り腐ってきている部分も有るかも知れません。
今回のように不安なので水止めをしたつもりが11年も雨水の浸入に気がつかず物を取り替えないといけないほど木を腐らせたのは初めてです。
木はFRPと違いバクテリアの栄養となる素材ですから真水を吸い込むと腐り始めます。
特に部品を取りつけたりして木口方向に切れている部分は真水を吸い込むとなかなか乾燥せず次の雨で又真水を吸いずっと木が濡れた状態が続きます。
と言う事は部品取りつけ穴などが一番腐れに弱い事になります。
腐るという面ではFRPに比べ圧倒的に劣っている木です。
値段の面でもちゃんとした造船大工でないと作る事が出来ないのでFRPより随分高いものになります。
メンテナンスもFRPほど放ったらかしには出来ません。
では良いとこ無しなのかと言うとそうでもありません。
本物のウエスト工法で作った木の船は軽くて(FRP船より)硬くて歪まない(FRP船より)船が出来ます。
僕は功利主義者ですからとにかく良い船をと言う面でウエスト工法の木造艇を選びました。
小さくても大きくてもFRPの船は歪んでゆがんで外力を逃がし元の形を保つのです。
それは船を速く走らせるためには不利な事になります。
動かないで欲しいマストを支えるワイヤーを船体に留めるチェーンプレートという金具の位置もFRP船では動いてしまいます。
FRPの船で外洋に出れば解りますが荒れてきたらこのまま壊れるのじゃないかというようなギーギーという心臓に悪い音がします。
船穀が動くので船穀内の造作に力がかかりあちこちから擦れ合う音が出るのです。
その点本物のウエスと工法ヨットは荒れた海でも全く音がしません。
水切り音と時に船体に波がぶつかる音だけです。
今度のバウスプリット基部の腐れも11年かかった花丸シェークダウンだと思って居ます。
「花丸」はどんどんシェークダウンして進水直後よりも良い船に仕上がってきています。