69 シンプルイズベスト（2003/01/30）
ヨットではよくシンプルイズベストという言い方をします。
それについて何か書けと言う読者の一人のご要望にお応えして、
今回の題は「シンプルイズベスト」となりました。
先ず一番シンプルなのは何もない海だけ。
次ぎにシンプルなのが自分が海に浮かんでいる。
（泳げないと直ぐに一番シンプルに戻る）
（たとえ泳げても当たりに陸がなかったらそのうち一番シンプルに戻る）
その次がヨットに乗った自分が海の上で生きている。
さあそのヨットについてですが、
先ず極端にシンプルなのはディンギーでしょう。
しかもレーサーでない最近ではそんなにお目にかかれない長距離帆走のためのディンギーです。
スパロー、Y-14 、Y-15マーク�、ソーラーディンギーこれら一連の長距離帆走ディンギーは、
全てがシンプルに出来ています。
そしていよいよ本題のクルージングヨットです。
何処までをシンプルというのでしょうね？
私にもしっかりした答えは解りませんが考えられる限りシンプルでないヨットを思い浮かべてみましょう。
発電機を積むと殆ど家庭で使っているものが使えるようになると考えて、
エアコン、冷蔵庫、製氷器、温水器、オーディオセット、風呂、パソコン、カラオケセット、ミラーボール、ヲッシュレット、と何でも積み込む人が居ます。
冗談ではなくてこれらを積んでいるヨットは有るのです。
大物ではグランドピアノを積んでいる100フィートを越えるセーリングヨットをガラパゴスで見たことがあります。
直ぐ近くに停泊したヨットからピアノの音が聞こえてきました。
でもエアコンを動かす為の発電機のエンジン音がずっとしている事の方が私にとっては気に障った。
それらを望む優雅な生活がしたかったら陸にいるに限ります。
どんなボロ家でもこれらを持っている家はごまんとあります。
これらがあるのは陸の上ではごく普通の生活なのです。
何処までは良くてどこからはシンプルでなくなるのかご自分で決めて下さい。
私は自分の船には上に上げた全てのものを積まないつもりでいます。
「私はパソコンはヨットに積むためにやっているのです。
だからパソコンは積みます。
ノートパソコンを外部との繋がりの主たる手段と考えています。」(2003/02/06修正）
さて次はいよいよ核心のヨットの帆走設備や補機のエンジンについてです。
扱いやすさという面ではエンジンは船外機かも知れません。
壊れても新しいのを直ぐに載せ替えられます。
しかし、ヨットで一番大切な信頼性から行くとやっぱりインボートディーゼルエンジンでしょう。
ガソリンエンジンよりはシンプルですがオイルはこまめにチェックして決して切らしてはいけません。
それに冷却水インペラーとそれを交換したときに必要なパッキンは必ず予備を持っておくようにしましょう。
それでもエンジンは補機ですから主機の帆走設備の能力には及びません。
この帆走設備が初めての人が気軽にヨットの世界にはいるのを頑なに拒んでいる最たるものではないかと私には思えます。
ぱっと見た目で何処に何が付いていて、
このロープは何のためのロープだというのが解らないのが最近のヨットです。
同じロープでもシートと呼ぶものもあります。
そして役目によってそれぞれのロープに英語の名前が付いています。
でも一番大切なのはメインセールを上げるためのメインハリヤードとジブセールを上げるためのジブハリヤード、
それにそれらの角度を調節するメインシートとジブシート。
この4本のロープが解れば 後は細かい調整のためのものだと思って間違い有りません。
マストを少々後ろに倒したり、
セールの深さを調節したり、
ブームを引き下げたり、
色々な役目のロープがあちこちに付いています。
メインハリヤードやジブハリヤードを含めて滑車やアイを通してあるロープは、
本来一番使いやすい位置にロープの力を入れる部分をリードしているものですが、
これが又 益々このロープは何のためのものなのかと考える原因になっています。
そしていざというときには頭がこんがらがって、
ロープもこんがらがって やらないといけない作業が瞬時に出来なくなる原因となっています。
一つ二つのロープに専門のクルーを配置しておけるようなレーサーならいざ知らず、
普通のショートハンド（少人数）の クルージングヨットではその辺のことをシンプルイズベストと言う考えでいかなければなりません。
メインハリヤードもジブハリヤードもシングルで乗るときはマスト基部での調整とクリートが一番良いのです。
非常事態になったときに思い知るでしょう。
大しけの中シングルハンドで舵を手放してマストとコクピットを行ったり来たりしたいとは誰も思わないでしょう。
必ず一度で決まるマスト基部の クリートをお勧めします。
ヨットでのシンプルイズベストは信頼おけるものだけを信頼置ける方法で船に設置し信頼おける技を身につけて海に出ていく事だと私は思います。