90 イーパブ (2004/05/09)

大阪の立尾さんという人がヨットを改造した船で櫓を漕いで太平洋を渡ると言う冒険に出発したのは2004年4月だった。

彼はたった28フィートのヨットで無寄港世界一周という偉業を成し遂げたヨット乗りである。

無寄港では食料が多いので28フィートというサイズは限界の小ささだろう。
それより大きいサイズの船でも失敗している人は今までに沢山いる。

立尾さんは面白いおじさんで栄養不足から歯抜けになったと言いながら歯の抜けた跡を見せてくれた。

またあまりに長く家を留守にしたので奥さんに逃げられて独身だと言って笑っていた。
世界一周中に離婚したというのは事実のようだ。

そんな彼が 次なる冒険 誰もやったことのない櫓を漕いでの太平洋横断に乗り出したのは出来るだけ海の荒れない期間を航海期間と出来る4月だったのである。

ところが当てが外れたというか 今年だけの特異な天候か 寒くて大時化で船は2回もひっくり返ったそうです。

立尾さんの改造ヨットはマストを取り外してそこに風力発電機を取り付けてありました。
そして櫓を漕ぐのに抵抗となるバラストも半分くらいで切り落としてありました。

それに櫓を漕ぐスペースを作るためにコクピットベンチを取り外して、
巨大なコクピットスペースが作られています。

まずマストを失ったヨットくらい不安定な物はありません。
ちょっとした波でひっくり返るようになります。
それに乗り心地も横揺れが激しくなり最悪です。

ヨットは潜水艦ではないのですからひっくり返ったら出入りの隙間や、
空気取り入れ口やありとあらゆる所から水が入り、
起きあがるまでには膝下浸水くらいは当たり前です。

でも立尾さんはそのくらいのことでギブアップするようなヨット乗りではないはずです。

彼は今日本に帰ってきたのですぐにはっきりするでしょうが、
どうも目的だった櫓で漕いで太平洋を渡ると言う肝心の櫓を嵐で失ったようです。

そこでイーパブの出番となったようです。

今までにもかなりの数のヨット航海者がイーパブでSOSを発信して救助されています。

外洋航行の船舶検査を受けるのにイーパブ携行は義務づけられているようですが、
私は持ちたくありません。
根性もなく気も弱いからちょっとしたことですぐに助けて欲しいとイーパブのスイッチを入れそうです。

昔の太平洋航海で船内でも氷が張るような寒さのおり 船がひっくり返ってびしょ濡れになった寝袋で、
がちがち震えながら折れたマストの事を考えたとき、
SOSを発信しなかったのは正直イーパブを持っていなかったからです。

自己責任とか言う訳のわからない言葉をすぐに飲み込む日本人の発想からすると、
冒険者は自殺者とそう変わらない、
途中で助けてくれと言ったりしたら何を言われるか解りません。

世の中の未来を切り開く誇り高い冒険者であろうと思うなら最初からイーパブは積まないことです。

国民の税金を遊んでいる人を助けるために使ったと言うような事を言っていては世の中は発展しません。

人助けのために危険なイラクへ行く人たちでさえ 救出の費用を払えと言われる日本です。
その原因を作ったアメリカ人にさえ笑われています。

少なくとも日本人がイラクで危険な目に遭う原因はとんでもない多額の税金を使って、
復興支援という名目でイラクに自衛隊を送ったからでしょう。
復興を支援するには人殺しの練習が仕事の自衛隊よりも神戸淡路大震災で一番力を発揮したNGOの人たちを送り込むべきでしょう。

命がけの冒険者や気がふれていると思われる発明が世の中を進歩させているのです。
誰も冒険者は世間のための冒険などとは考えていないでしょうが、
実はその一人一人の小さな冒険が今日の文明を切り開いたのです。

イーパブを使うと世間を騒がせたと言われるなら、
私はイーパブは持ちたくないが、
イーパブを発信した人を悪く言うのは間違いです。

ほとんどのヨット乗りがイーパブなど必要のないその辺をうろうろしているだけなのですから。

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